三菱重工業が生みの苦しみに直面している。船舶・海洋事業の復活をかけた客船建造で巨額の特別損失を計上し、戦略修正を迫られた。昨年は国産初の小型ジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の納入延期を発表。悲願の売上高5兆円に向け、将来の成長を担う注力事業を軌道に乗せることができるか、“巨艦”がもがいている。
顧客の要求水準上昇
作業中に火災事故が発生した客船「ダイヤモンド・プリンセス」の引き渡しから約10年。三菱重工が社運をかけて臨んだプロジェクトが思わぬ誤算に直面している。
「(客船建造が)技術的にできないということではなく、お客さまとの仕様の確定に時間を要している。10年ぶりということもあるが、プロトタイプ(1番船)であることが大きい」
3月24日、東京・品川の本社で開かれた記者会見。船舶などを担当する交通・輸送ドメイン長の鯨井洋一副社長(当時は常務)はこう説明した。