■ベンチャーが大量生産、有機ELなど応用期待
繊維の太さがナノ(ナノは10億分の1)メートル単位の超極細繊維「ナノファイバー」。東京工業大発ベンチャーのゼタ(横浜市)の低コスト、大量生産の独自技術が、年内にも海外の大学との共同研究に入るなど、実用化に向けて大きく前進している。ナノファイバーは、次世代パネルとして期待される有機EL(エレクトロルミネッセンス)や再生医療、微小粒子状物質「PM2.5」対策のマスクなど、幅広い分野の製品開発での応用が期待される。日本発の技術が、夢を紡ぐ「21世紀の繊維」を作り出す。
安全と低コスト両立
横浜市内のゼタのオフィス兼研究所の一室。ナノファイバーの発生装置に電源を入れると、数分後にはノズルの先端から白く細い糸状の素材が勢いよく噴き出し、みるみるうちに綿状で、しかもムラのない極細繊維のシートができあがった。
ナノファイバーの従来製造は、原料のポリマーを噴射するノズルと繊維を回収する装置の間に高電圧をかけることで、同極の電荷が反発する力が働いてポリマーが伸び、ナノメートル単位の不織布ができあがる。ただ、このノズルと回収装置の間で、どうしても静電気による電界干渉が発生し、大量生産しにくいという課題があった。