ガンダム以前、アニメ番組のスポンサーの多くが玩具メーカーで「アニメは玩具のCM」という状況にアニメ製作者は甘んじていた。「そんな時代に3人はガンダムでこの常識を覆したのです。しかし、伝説を創った3人なのに伝記と呼べるものがこれまでなかった。35年を機に3人の記録を漫画で残したかった」と大和田さんは言う。
漫画では、メカデザインを担当した大河原さんの“秘策”も明かされる。大河原さんは、主人公メカのガンダムについてはメーカーの意向を尊重したが、玩具化の計画のなかった敵メカのザクは自分の思うままに現実の兵器のようなリアルなデザインで描き上げる。放送後、プラモデル化されたザクはメーカーの思惑に反し、ガンダムと人気を二分するメカに成長。バンダイのプラモデル「ガンプラ」は30年間で累計4億個を超えるヒット商品となった。
また、昭和54年の初放送が低視聴率のため打ち切りの事態となるが、何とか活路を見い出そうと苦闘する富野さんらの葛藤も赤裸々に描かれる。富野さんは「時代がまだついてこれないだけ」という信念を持ち続け“敗者復活戦”といえる再放送に望みをつなげる。実際に、熱心なファンから再放送を求める嘆願書が殺到、映画化の話も浮上する。