一方、東レの日覚昭広社長は炭素繊維の量販車への本格採用については「もう少し時間がかかるだろう」と慎重だ。「航空機は使用量が多いので炭素繊維による軽量化の燃費改善効果が大きいが、自動車の場合は軽量化よりも運転の仕方(の改善)などの方が(低燃費への貢献は)大きい」と説明。東レは熱可塑での強度向上と、熱硬化の加工時間を短縮する製法の両方を同時並行で進めている。
量販車への採用が進まない理由は他にもある。鉄鋼各社は軽量化の技術開発に注力するほか、自動車各社もエンジンの小型化や部品数の削減で燃費改善を進める。炭素繊維の製造コストは鋼鉄よりも約30倍も高いとされ、量販車に採用するメリットはまだ低いのが現状だ。