世界の主要通貨の中での通貨の実力を示す「実質実効為替レート」で、円が昨年10月以降、約5年ぶりに韓国ウォンを下回り、韓国企業に対する日本メーカーの輸出競争力に有利な状態が続いている。2008年のリーマン・ショック以降の急激な円高に苦しむ日本の電機業界などは、ウォン安も追い風に価格攻勢を強めるサムスン電子など韓国勢に対し、テレビなどの主要製品で後(こう)塵(じん)を拝す立場となった。ただ実質実効レートの逆転で、日韓の競争環境が変わる可能性も出てきた。(塩原永久)
独立行政法人経済産業研究所は27カ国の通貨を対象に2005年基準の実質実効レートを算出している。これによると08年秋のリーマン・ショック後に急速に進んだ円高により円がウォンを上回った。投資家が安全資産とされる円を買う姿勢を強めたためだ。
流れが変わったのは12年末の政権交代だ。安倍晋三政権による大胆な金融緩和を期待した円売りで円安が進行し、12年11月20日に円の実効レートは100を割り込み、今月16日には80・1にまで下落した。
逆にウォンは同じ期間に83・0から86・5へと4・2%上昇。韓国経済は堅調で経常黒字が続き、ウォンが買われやすい状態にあるためで、5年ぶりの日韓通貨の実効レート逆転について、経済産業研究所の実効レートのデータベースを構築した学習院大学の清水順子教授は「日本企業の輸出競争力を改善させていることは確かだ」と指摘する。