8日に日立製作所が発表したトップ交代に伴い、川村隆会長が6月下旬の株主総会後に相談役に退くことで、同氏の就任を軸に進められていた経団連の会長人事は仕切り直しを余儀なくされることになった。
川村氏は重電分野へのシフトで日立を成長軌道に乗せた経営手腕が高く評価されており、経団連では筆頭副会長として教育問題や経済外交、アジア・太平洋地域委員長などを務めている。今年6月上旬に2期4年の任期を満了する米倉弘昌会長は「後任は日本を代表する製造業で財界活動にも熱心な方」と述べ、川村氏を次期会長の有力候補とみていた。
だが、再三にわたる秋波にも川村氏は74歳という高齢を理由に固辞し続けた。昨年秋にはフジサンケイビジネスアイの取材に「私が退かないと日立社内の若返りが進まない」と語っていたが、最後まで勇退の決意はぶれなかった。8日の会見では「次の世代にバトンを渡すときが来た」と強調。「財界活動は現役で仕事をやっている人がいい」と述べ、会長に就任する中西宏明社長に後を託す考えを示した。
本命が消えたことで“財界総理”選びは白紙に戻る。後任の指名権を持つ米倉氏が初志を貫徹して製造業にこだわるなら現職副会長の中では三菱重工の大宮英明会長、トヨタ自動車の内山田竹志会長、東芝の佐々木則夫副会長が有力候補に浮上する。製造業以外では三菱商事の小島順彦会長を推す声もある。タイムリミットはあとわずかだ。