--環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉は越年したが
「仕方がない。昨年末の閣僚交渉がまとまらなかったということは、各国が国益確保に向け真剣に交渉している証左だ。それぞれが政治的判断で、何を守り何を譲るべきかを考えていると思う。新年早々に始まる議論を見守りたい」
--中国や韓国とは領土問題できしみが目立つが
「政治的には厳しい環境に直面しているが、日中韓は自由貿易協定(FTA)交渉を粛々と進めている。各国とも、経済的な協力関係を必要としている。経団連も今年5月までには、中国に訪問団を出したいと思っている。3月にはオーストラリアとニュージーランドにも経済使節団を出す。民間外交で経済連携交渉を後押ししたい」
--経済連携交渉はほかにもある
「東南アジア諸国連合(ASEAN)は、15年の市場統合に向けた交渉を着実に続けている。同時にASEAN10カ国は日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド6カ国を加えた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も積極的に進めようとしている。TPP14カ国とRCEP16カ国が一緒になれば、アジア全体の自由貿易圏(FTAAP)ができる。他方、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定も交渉が進んでいるし、米国とEUも経済連携を進めている。最終的には、世界の国内総生産(GDP)の90%を掌握する自由貿易圏ができると期待している」
--安倍内閣への注文は
「これからいろいろな規制改革を実施していくうえで、省庁間の縦割り闘争が激しくなる。首相のリーダーシップで押さえ込んでほしい。忘れてはならないのが震災復興とエネルギー問題だ。安全性が確認された原子力発電所は、地域の住民・自治体の同意を得て速やかに再稼働してほしい」