気軽に楽しむコーヒーに高級志向が広がってきた。コンビニエンスストアなどが本格的な、いれ立てコーヒーに参入するなど販路が拡大し、一杯へのこだわりを持つ消費者が増えたためだ。利益率の高いコーヒーを戦略商品と位置づける外食や小売りも、市場での埋没を防ごうと高級コーヒーの販売を加速している。
出勤途中のサラリーマンが行き交う16日午前8時半過ぎ。ローソンゲートシティ大崎店(東京都品川区)の「マチカフェ」カウンターには行列ができていた。
人気は10日から期間限定販売を始めた希少豆「イエローブルボン」を100%使ったコーヒーだ。価格は従来のブレンドコーヒーと同じ180円からに据え置いた。近くで勤務する女性会社員(33)は、「この価格なら、毎日飲めるからうれしい」とほおを緩める。ローソンの玉塚元一最高執行責任者(COO)は、「品質の高さを知ってほしい」とシェア獲得に自信を見せる。
缶コーヒーを扱う飲料各社も高級路線にかじを切る。サントリー食品インターナショナルは、世界遺産に登録されたコロンビア産地の豆を使用した「ボス コロンビアトラディショナルブレンド」を3日に発売した。同様に日本たばこ産業も3日から、ブラジルの輸出等級で最上級のコーヒー豆「ブラジルNo.2」を100%使用した「ルーツ プレミアムブラック」を、サークルKサンクスで販売している。
味へのこだわりを追い風に、レギュラーコーヒー大手は、ギフト需要を視野に高級豆の販売を強化する。キーコーヒーは、ブルーマウンテンの最上級グレード「No.1」を1日から限定で発売したほか、UCCグループは、高級豆を扱うネットショップ「DE CICA(デシーカ)」をオープンした。
全日本コーヒー協会によると、いれ立てのコーヒー販売はすし店などにも拡大しており、コーヒーの国内消費量(生豆換算)は、今年10月までで約38万トンと、過去最高を上回るペースで推移している。各社の参入が相次ぐ中で、「品質などの差別化が急務」(ローソン)となっている。