公共交通機関が頼りにならないとして、お年寄りなど交通弱者の移動手段をどう確保するか。そこで候補になりうるのが、電気自動車(EV)に自動運転技術をからめた新しい交通体系の構築だ。
ちょっとした買い物でも自動車に頼らざるを得ない地方では、ガソリンスタンド(GS)の減少が大きな問題になっている。1994年に全国に6万カ所あったGSは、今春には3.6万カ所まで減った。地域によっては、最寄りのGSに行くのに往復1時間クルマを走らせないといけないような場所も出ている。
一方、日本では人間が住んでいる場所には電気はほとんど来ている。航続距離の短さが普及のネックとなっているEVだが、近場の移動手段としては活用の方法がいろいろ考えられそうだ。基礎自治体でEVを共有し、お年寄りの通院などの足を自動運転で提供することができれば、大規模で高コストな公共交通機関を維持する必要性は低くなる。
高齢化社会における新しい交通体系の像を日本が提供できれば、後を追う国にとっては大きな参考になるはずだ。それは巨大なビジネスチャンスでもある。
2020年には東京に五輪がやってくる。その舞台となる東京湾岸地域を新たな交通体系のショーケースにすれば、絶好のアピール機会となる。国をあげて取り組むに値するのではないか。(「週刊東洋経済」副編集長 西村豪太)