「社長、今度の車はいかがですか」
「うーん、まあ80点だな」
新車発表会で、こんなやり取りに出くわしたことがある。約20年前、若者に絶大な人気を誇った日産自動車「シルビア」の新モデル。社長がつけた点数に、開発担当者が何ともいえない表情をしていたことを思い出す。
通常の試験ならば、80点は及第点だろうが、新車の評価としてはかなり辛口だ。そんな車にゴーサインを出した経営陣もどうかと思うが、確かに車体が大きくなり過ぎ、デザインも前モデルに比べてインパクトに欠けた印象だった。
社長の評価通り、そのモデルの販売は伸びず、次のモデルを最後にシルビアの車名も消えた。
こんな古い話を思い出したのは、やはり一世を風靡(ふうび)した車が消えたからだ。同じ日産の「ブルーバード」。「ブルーバード・シルフィ」として辛うじて名前が残っていたが、昨年12月のモデルチェンジで「シルフィ」に統一、ほぼ半世紀の歴史に幕を閉じた。