一方、現地で働く従業員の健康被害を防ぐため、マスク着用などの自衛策を取る企業が目立ってきた。
大手商社の三井物産や丸紅は1月中旬、北京事務所などの社員に微粒子を防ぐためのマスクを緊急配布した。現地ではマスクが品薄になっており、飲料大手のアサヒグループホールディングスや三井住友海上火災保険などはマスクを日本から送ったほどだ。
企業の中国進出などに詳しいみずほ銀行産業調査部の石井邦彦参事役は「汚染環境は急に改善しない。外出を控えたり、交代勤務を導入したりする動きが出てくる」と労務の見直しが課題になると指摘する。
現在、中国事業からの一時撤退などの動きは出ていないが、2003年に新型肺炎(SARS)が流行した際には、日本企業は工場の操業停止や駐在員の国外退避を余儀なくされた経緯もあるだけに、警戒を強めている。
パナソニックが現地社員や日本から出張する社員に不要な外出を避けるよう指導したほか、上海を中心にミスタードーナツを展開するダスキンも社員に注意喚起した。