スプリント・ネクステルの買収で米国進出を本格化させるソフトバンクにとって、最大の懸案は買収資金の調達とインフラ投資だ。同社の純有利子負債は6月末時点で8000億円規模だが、買収に伴う負担で財務基盤が大きく揺らぐ恐れもある。
米国の携帯市場はAT&Tモビリティ、ベライゾン・ワイヤレスの上位2社が計6割超のシェアを占め、参入の壁は高い。買収後には米国でのネットワーク整備や次世代無線免許を得るオークションのため、追加投資も必要になる。ソフトバンクは、11年12月末時点で約1兆5000億円にのぼるスプリントの負債も背負い込むことになる。
「財務は厳しくなるが手元資金も十分あり、保有株式の売却などで(米国事業が)失敗しても倒れることはないだろう」。公認会計士の大原達朗氏はこう指摘するが、15日の東京株式市場では、財務の悪化懸念などからソフトバンク株は売られ、終値は前週末比127円安の2268円と7営業日連続で下落した。
「(借入金の)返済には自信がある」。孫正義社長は15日の会見でこう胸を張り、同席したスプリントのダン・ヘッセ最高経営責任者(CEO)も「ソフトバンクの日本での成功体験を学びたい」と語った。だが、買収を繰り返して巨大化する経営手法には、投資負担に押し潰されるリスクもある。(渡部一実)