全国の霊場を巡るツアーの人気がじわりと高まっている。リピーターの増加に加え、東日本大震災をきっかけに信仰に興味を持つ人が増えているためだ。旅行各社はツアーの本数を増やしたり、格安料金を設定したりして、利用者の裾野拡大を図っている。
8月上旬の早朝、東京駅周辺はバスツアーの出発客でにぎわっていた。阪急交通社が実施する坂東三十三観音霊場巡りのツアーバスは、高齢者を中心に満員だった。
1人で参加した東京都文京区の主婦(61)は「信心深いわけではない。スタンプラリーをやる感覚」と屈託がない。中学時代の同級生3人グループで参加した東京都府中市の主婦、関文代さん(69)は「東日本大震災が起きたことで自分の根っこを知りたくなった」と話す。
人気の原因について、同社の担当者は「震災後の不透明な時代に『癒やされたい』と感じる人が多いのでは」と分析する。
同社によると、今年4~7月の四国八十八カ所(お遍路)などの霊場巡りツアーの参加者は一昨年同期比で約30%増となり、震災による影響を払拭した。