一方のグリーは8日に決算発表を迎えたが、田中良和社長はコンプガチャ対策について「真摯(しんし)に取り組む」と述べるにとどめた。同社はソーシャルゲーム関連6社でつくる協議会の主導的立場。当時は業界指針の策定のまっただ中にあり、グリーは「できあがった指針に従う」という立場をとっていたからだ。しかし、DeNAの突然の“廃止宣言”を受けて、その数時間後に急遽(きゅうきょ)、コンプガチャの廃止を発表せざるを得なかった。
泥仕合の様相
足並みの乱れの背景には両社の提訴合戦がある。ゲームの著作権侵害などをめぐる訴訟は今や泥仕合の様相。コンプガチャ問題への対応を協議する状況になく、守安氏も「訴訟などもあり、グリーと協調が取れなかったことは反省している」と認める。
一方、業界の成長スピードにコンプライアンス(法令順守)が追いついていない側面も否めない。未成年者がゲームに数十万円をつぎ込むことは珍しくなく、キャラクターやアイテム、ゲーム内の仮想通貨などを現実の通貨で売買する「リアルマネートレード(RMT)」をめぐる詐欺などのトラブルも頻発している。
各社ごとに24時間体制でのサイト監視などの対策をとるが、実効性は不十分。6社の協議会はコンプガチャを禁止する方針こそ示したものの、5月末に公表するはずだった業界指針はいまだに発表されていない。
コンプガチャは、ソーシャルゲーム会社にとって収益性が極めて高いサービスだっただけに、両社は今後、大幅な経営戦略の変更を迫られる。コンプガチャに代わる新たな課金システムの開発を急ぐが、再び規制の網に引っかかる可能性もあり、課金システムそのものへの批判も絶えない。
ソーシャルゲーム会社によっては、売り上げの3割にも達するといわれるコンプガチャ。それに代わる新たなサービスを開発できるのか。急成長を遂げた業界は最大の試練を迎えている。(高木克聡)