「自国回帰」難局でも踏ん張る製造業 日米、人件費急騰で脱中国の動き (1/3ページ)

2012.5.23 05:00

生産の「国内回帰」を探る主なメーカー

生産の「国内回帰」を探る主なメーカー【拡大】

 日米で製造業の「自国回帰」の動きが加速している。背景にあるのは中国の人件費高騰だ。短期的には労働コストの上昇要因となるが、日米とも「雇用を守りたい」という考えで官民が一致。工場の自動化・効率化などの生産革新で内外のコスト差を縮めるだけでなく、米国では強力な国の政策も回帰を後押しする。日本は高品質の「日本製」を前面に輸出拡大を図る構えだ。先進国の宿命ともいえる産業の空洞化に立ち向かう試みがいま、成果を上げつつある。

 国内の雇用を重視

 「この会社は、国外よりも米国内の雇用を重視しているだけでなく、『メード・イン・アメリカ』と刻印された製品を中国の顧客に販売している」

 米ウィスコンシン州ミルウォーキーにある米錠前大手「マスターロック」の工場を2月に視察したオバマ米大統領は、生産拠点を中国から移した同社を手放しで称賛した。

 11月に迫る大統領選での再選を目指すオバマ大統領は、景気回復の鍵を握る製造業を政策面で後押しする。1月の一般教書演説では「米国に製造業を取り戻す」と宣言。国内雇用を広げる企業への税制優遇を打ち出した。四半世紀ぶりの法人税改革案も発表し、法人税率を最大28%まで原則引き下げるという。

 ミシガン州デトロイトでも「エレメント・エレクトロニクス」が、米メーカーとしては実に17年ぶりとなる自国でのテレビ生産を今年から始めた。世界最大の建機メーカー、キャタピラーは今年半ばにテキサス州で新工場を建設する計画だ。

 背景には中国の労賃の急騰がある。製造業の1人当たり平均賃金はここ数年2桁増のペースで伸び、5年間でほぼ倍増した。米ブルッキングス研究所のハワード・ワイル研究員は「賃金の急上昇を目の当たりにし、多くの米企業が中国から拠点を戻した方がメリットがあると思い始めた」と指摘する。

(次ページ)「脱・中国」の動きは日本メーカーにもみられる

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