パナソニックの大坪文雄社長は「ここ数年、会場では韓国企業の勢いを実感する」と率直な印象を語る一方で、「品質では負けない」と、対抗意識をあらわにした。
サムスンの最大の強みは、世界各地の異なるニーズや消費者の好みをきめ細かくくみ上げ、製品に反映させるマーケティング力にある。米国ではテレビの薄さや軽さを追求し、洗練されたデザインを取り入れ、今や「高級ブランド」と認知されている。
巨額の研究開発費を投じるとともに、日本のメーカーからも大量の技術者を引き抜き、技術力でもキャッチアップしてきた。しかも、新しい技術を製品にするスピードが速い。一気呵(か)成(せい)の設備投資による量産でコスト競争力を高め、宣伝広告費も惜しみなく投入し、市場を制圧する。
昨年7~9月期のスマートフォン(高機能携帯電話)の世界シェアで、米アップルの「アイフォーン」を抜き、首位に立った「ギャラクシー」は、サムスンの戦略の象徴だ。
日本メーカーの技術者は、「テレビの画質や音のバランスでは、まだ優位性がある」と、技術力に裏打ちされた細かい品質では勝っていると強調した。
だが、開発・生産・販売の総合力を磨かないと、技術も宝の持ち腐れだ。世界市場でサムスンの背中はさらに遠くなりかねない。(古川有希)