寺社の拝観料も「カードで」 訪日客に備え“決済”多様化「自分の国のようで快適」

 
東京・渋谷の南欧料理店「ザ・リゴレット」のバーでクレジットカードを差し出すスウェーデン人客(左)=9月中旬

 クレジットカードによる支払い方法が多様化している。増加する訪日外国人客に対応するため、大手カード会社が欧米で一般的な飲食店のテーブルで会計を済ませるための機器を提供。IT企業は寺社の拝観料や土産物店で低コストのカードシステムを導入している。

 東京・渋谷の南欧料理店「ザ・リゴレット」で9月中旬の夜。バーで食事を済ませたスウェーデン人客が店員を呼び寄せた。店員のタブレットに表示された金額を確認しカードを差し出してモバイル端末に暗証番号を入力、支払いを終えた。「食事の後、その場でカードを使えると、自分の国のようで快適だ」と満足した様子だった。

 今年4月の開店からこの端末を導入、担当者は「カードを多く利用し、席に座ったまま支払うことに慣れている外国人客の取り込みに、こうした端末は有利」と話す。

 カード会社の三菱UFJニコス(東京)がシステムを開発、昨年11月から全国の加盟店で展開している。iPhone(アイフォーン)、iPad(アイパッド)に専用アプリをダウンロード、モバイル端末と無線でデータをやりとりする。

 同社の開発担当者は「飲食業中心に、店内どこでも使えるレジ以外の端末がほしいという要望が強かった」と話す。

 高野山真言宗の総本山金剛峯寺(和歌山県)が今年4月、カードで拝観料を支払えるシステムを導入した。

 カード決済はこれまで、少額支払いが多い国内の観光地では投資コストに見合うだけのメリットが期待できず、あまり広がっていなかった。海外からの来訪者が増加したことで取り入れる動きが広がり、同様に外国人客が多い北海道や長野県のスキー場でも土産物店などで利用が増えている。

 システムを提供するのは米ITベンチャーのスクエアで、アイフォーンやアイパッドに差し込んだ小型機器がカード情報を読み取る。

 レジなどの新たな機器は必要ない。2013年に日本で事業を開始。小規模店舗を中心に利用が広がり、ここ2~3年の新規導入件数は前年に比べ10%以上増えている。

 同社の日本法人は「2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、利用はさらに拡大する」とみている。