銀行カードローン 問題は消費者金融に“丸投げ” 自己破産も増加

 

 銀行カードローンへの風当たりが強まり、各行や金融庁が対応を強化せざるを得なくなったのは、従来の「多重債務の温床」懸念が現実のものとなりつつあるためだ。

 カードローン残高が急増する中、自己破産の申し立ても13年ぶりに増えた。行き過ぎた融資を本当になくすには、消費者金融に審査を依存しリスクをとらない“丸投げ”との批判がある地方銀行の一部などが顧客保護の視点に立ち返ることが求められる。

 「多重債務者問題が発生しないよう、健全な消費者金融市場が育成できるよう対応を重ねていく」

 銀行カードローンについて、14日の定例会見でこう述べた全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)の表情には危機感がにじんでいた。

 低金利が続く中、銀行は利益を得やすいカードローンに注力したが、日本弁護士連合会などが過剰融資が横行していると指摘し社会問題化。全銀協は3月、融資上限引き下げなどの自主規制策をまとめた。

 だがカードローンの貸出残高は増え続け、6月末に約5兆7000億円と19年ぶりの高水準を記録。個人の自己破産申請件数も昨年は6万5000件弱に上り、13年ぶりに前年から増えた。

 消費者金融にはかつての過剰融資問題で、年収の3分の1超を貸せなくなる「総量規制」が導入された。だが銀行は規制の対象外で、多重債務者の増加を危ぶむ声も強まっている。

 これまで金融庁は銀行の自主性を重んじ、調査は聞き取りにとどめてきた。だが事態に改善がみられず、9月に立ち入り検査に切り替えることを表明。「金融レポート」でも問題点を指摘し、だめ押しする。

 金融庁が問題視するのは、一部の地銀などが、債務を保証する消費者金融に融資審査を含めた貸し付けリスクを丸投げしていることだ。ある幹部は、「ノーリスクで利ざやが抜けるからといって、いくらでも貸すのは金融機関といえるのか」と手厳しい。

 銀行に求められるのは顧客の収入状況や利用目的を把握し、適正に審査して融資する「金融機関の原点」(別の金融庁幹部)に立ち返ることだ。それができないとなれば、銀行カードローンへの総量規制の導入も現実味を帯びてくる。(中村智隆)