損保業界 人口減で市場縮小…法人向け活路

 

 損保業界では顧客企業の健康経営を後押しする取り組みが活発化している。人口減少により保険市場が縮小していくのに加え、若者の車離れなどで主力の自動車保険が先細る見通しの中、法人向け商品はまだ伸びしろがあるとの判断が背景にある。大手損保の担当者は「サイバーリスクなど法人向けには新たなリスクが顕在化しており、まだ伸びる可能性がある」と話す。ただ、保険商品での差別化は難しく、価格競争も限界がある。そこで、損保各社がしのぎを削るのがサービス競争だ。中でも健康経営は各社が力を入れる。人手不足が深刻化する中、関心が高い割に実践している企業は少ないからだ。

 東京商工会議所が300人以下の企業を対象に今年6~7月に実施したアンケートでも、健康経営を実践していると回答したのは20.8%にとどまった。実践する上での課題も、「どのようなことをしたらよいか分からない」(38.1%)、「ノウハウがない」(22.7%)という声が多数だった。

 こうした状況を受け、東京海上日動火災保険は今年1月、社内に健康経営に関する専門チームを設置、各部署が横断的に商品開発などを行える体制を整えた。4月には国から「健康経営優良法人」認定を受ければ業務災害総合保険料を5%割り引くサービスも始めた。

 「健康経営のサービスは営業のとっかかりの『ドアノックツール』としても効果的だ」と話すのは、三井住友海上火災保険の担当者。同社は4月にスマートフォン向けアプリ「ココカラダイアリー」の無償提供を開始。アプリでは歩数や体重、血圧、睡眠時間などの健康データを記録することが可能で、企業が従業員の健康状態を把握するツールとしても使え、利用者の評判も上々という。

 損害保険ジャパン日本興亜も、企業を通して介護特約付き医療保険に加入した従業員を対象に、SOMPOホールディングス傘下の介護施設の割引が受けられるサービスを行っている。(蕎麦谷里志)