東芝とWDがトップ会談 半導体売却合意 最終局面に
東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐり、綱川智社長と来日した米ウエスタン・デジタル(WD)のスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)がトップ会談を始めることが28日、関係者の話で分かった。東芝はWD陣営への売却に向け、WDの将来の議決権比率や経営への関与などを詰める。月内の契約を目指し、交渉は最終局面を迎えた。
ミリガン氏は27日に来日し、経産省の担当者らと接触した。WDは米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、官民ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行などと組み、総額2兆円規模の買収を提示している。買収時には日本勢が議決権の過半を握り、WDは普通株に転換できる社債を引き受け、当面は議決権を持たない方向で調整している。
ただ、WDが将来議決権をどの程度持つかなど、東芝メモリへの経営関与では折り合えておらず、交渉の最大の焦点になっている。関係者によると、WDは重要事項に対する拒否権を得る3分の1の議決権を持たず、東芝メモリに役員も派遣しないという内容の契約書を示しているという。
これに対し東芝関係者は「スタート地点(から当面)はそうなっているが、何年かするといろんなことができる仕掛けがある」と不信感を強める。議決権の追加取得や役員派遣には抜け道があり、それらを契約で縛ることが必要とみているようだ。
東芝はWDへの警戒から、東芝メモリの保有株の一定水準を東芝に残す案も提案している。
東芝がWDの将来取得できる議決権を低く抑えたいのは、半導体メモリーで世界シェア3位のWDが2位の東芝メモリへの経営関与を強めれば、各国の独占禁止法の審査が通りにくくなる懸念などがあるからだ。逆に、WDも自社の権益確保を追及してきた経緯があり、どこまで歩み寄れるかは不透明だ。
東芝とWD陣営が正式契約すれば、WDは東芝メモリの売却中止を求めた複数の訴訟を取り下げる見通しだ。だが、東芝関係者は「地雷を潰すには時間がかかる。月内に間に合わないかもしれない」と漏らした。
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■東芝メモリの売却交渉の焦点
◇WDが将来取得する議決権
(東芝)低く抑えたい(WD)一定の経営関与を求める
◇WDの東芝メモリへの役員派遣
(東芝)派遣しないことを求める(WD)当面は派遣しない方向
◇東芝による東芝メモリへの出資
(東芝)一定水準を残したい(WD)買収時に日本勢の議決権過半取得は受け入れ
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