総合電機メーカーのパナソニックが、自転車事業の立て直しに乗り出している。製造販売を手がける子会社「パナソニックサイクルテック」(大阪府柏原市)の社長に4月就任した片山栄一氏は、今後10年のうちに売上高を3倍に伸ばす目標を掲げた。日本の自転車市場は長年、安価な中国・台湾製品に押され、国産メーカーの多くは縮小や撤退を余儀なくされてきた。しかし片山氏は、電気自動車(EV)や電動アシスト自転車によって乗り物の環境は激変すると指摘。「電動」というパナソニックの強みを生かし、反転攻勢に打って出る。(産経新聞社 上野嘉之、板東和正)
鍵握るテスラとの提携
「自転車業界はあまり変わらないと見られがちだが、定義を変えていけば大きく伸びるチャンスはいくらでもある」
片山氏は産経新聞のインタビューでこう強調した。定義を変えるとは、電動化と少子高齢化の進展に沿って、自転車の社会的役割を変えることだという。
特に電動化をめぐっては、劇的なコストダウンによって普及に弾みがつく可能性があるという。その鍵を握るのがEVだ。
パナソニックは米EVメーカーのテスラと提携し、今年1月から米ネバダ州で工場を共同運営して車載用リチウムイオン電池を量産している。
「世界の自動車市場1億台に対し、テスラの生産台数は今年、10万台程度。シェアは0・1%に過ぎないが、テスラの株式時価総額は500億ドル(約5兆5000億円)を超え、GMやフォード、パナソニックより大きい。それだけEVの普及が見込まれている」