(上)決済の主役へ 「国のお墨付き」が普及加速

膨張する仮想通貨
ビットコイン決済を導入したビックカメラ有楽町店のカウンター=7月下旬、東京都千代田区

 インターネット上で取引され、硬貨や紙幣を持たない仮想通貨。「ビットコイン」に代表されるこの電子的なデータが急速に価値を高め、現実世界でもお金の替わりとなる場面が増えてきた。一方で投資マネーが流入し価格は急騰。規格の分裂騒動が起こるなど、今後の普及に向けた課題も浮かび上がっている。

 想定以上の利用

 「ビットコイン使えます」。家電量販店ビックカメラ有楽町店(東京都千代田区)のレジカウンターには4月から、導入をアピールする案内書きが掲げられている。「休日は1日約30件の利用がある」と従業員は手応えを話す。

 ビットコインは、世界で最も流通する仮想通貨の代表格だ。ビックカメラは顧客の支払い手段を増やすために4月に2店舗で試験的に導入。「想定以上に利用が多い」(広報)ため、7月下旬には直営の全38店で使用できるようにした。

 ファッションビルを展開する丸井グループ(東京)も8月から一部で試験的に受け入れ、中国料理の聘珍樓(横浜市)も3月にビットコインを導入した。

 仮想通貨が注目されている一番の理由は次世代技術の活用による送金コストの低さだ。金融機関を通さないことで、海外へも安く短時間で送金できる。外国で使う場合も両替の必要がなく、訪日外国人観光客需要が見込める業種などで普及が進む。

 仮想通貨の存在感が国内で高まった背景には、法整備が進んだことがある。仮想通貨を規制する法律はなかったが、今年4月に改正資金決済法が施行。仮想通貨を扱う取引所が登録制となり「国が決済手段としてお墨付きを与え、安心してコインを持てるようになった」(市場関係者)との意識が広がった。

 決済の主役へ

 利用者数は右肩上がりに増加し、今ではビットコインだけでも世界で1600万人以上だ。800種類以上とされる仮想通貨全体の時価総額は、8月中旬時点で計約16兆円に膨らんだ。

 仮想通貨に詳しい増島雅和弁護士は「円やドルに替わって、将来的には仮想通貨が決済手段の主役となる可能性がある」と述べ、潜在力に期待を示す。