チームラボが手掛けた光や音を自在に操るアート作品 ディズニーアニメの再現も
光が自在に動き回る。人の動きで光を操る。そんな空間が東京都内に相次ぎ登場して、中に入った人たちを楽しませている。手掛けたのはウルトラテクノロジスト集団のチームラボ(東京都文京区)だ。
東京都渋谷区にある渋谷ヒカリエ9Fヒカリエホール。中に入ると、四方の壁面と天井に多数の動くライトが設置されている。上演が始まると、これらのライトから放たれた光が柱のように整然と並び、上下に交差して光のトンネルを作りだし、激しく乱れ動いて部屋の中を埋め尽くす。
7月28日から9月10日まで開催中のイベント「バイトル presents チームラボジャングルと学ぶ! 未来の遊園地」で体験できる「チームラボジャングル」という作品。これだけなら、光の演出を見て楽しむプロジェクションマッピングと大差はないが、「チームラボジャングル」は“参加没入型”で“体験型”のミュージックフェスティバルと銘打たれているだけあって、自分が積極的に動いて光に触れ、展開を変えていく楽しみが用意されている。
左右の壁から水平に照らされた光に体験者が触れると、光が上へと跳ね上がる。また降りてきた光に触れて跳ね上げさせるアクションが、会場のそこかしこで繰り返されることによって、空間を照らす光が生命を持っているかのように見えてくる。その時間、同じ場所にいた人たちによって作り出される光と音楽。これを、チームラボでコミュニケーションディレクターを務める工藤岳氏は「ミュージシャンのいないミュージックフェスティバル」と例える。
壁を照らす赤い頭蓋骨のような光に触れると、光は上に跳ね上がって音を出す。花や星といった模様が降りてくる画面もあって、ここでも触れることによって様々な光や音が発生する。体験者が競い合うように光に触れて音を奏でていくことで、誰もがミュージシャンになったような気分を味わえる。チームラボ代表の猪子寿之氏は、「アートは美術館のようなところでひとり静かに観ていくのが普通。もっと躍りながら身体そのものでアートを知覚して欲しいと思ってやっている」と話して、積極的な体験への参加を呼びかけた。
光る大きなバルーンが何個も会場内へと入って来るタイトルでは、参加者は手でバルーンを跳ね上げ、会場内を行き来させて楽しむ。その際にバルーンは同じ色になったり、位置によって違う色を灯したりといった具合に変化を見せる。バルーンがどこにあるかを検知して色を変える仕掛けが背後で動いている。センサー技術を駆使し、光や音を操るアート作品を作り続けてきたチームラボらしいタイトルだ。
「チームラボジャングル」の隣の会場では「学ぶ! 未来の遊園地」も展開中。自分で色を塗った動物たちが、スキャニングされた上でデコボコとした場に映し出され、動き回る「山と谷/Graffiti Nature -Mountains and Valleys」、映し出される甲骨文字にタッチすると、それが表す動物などが出現してスクリーンを動き回る「まだ かみさまが いたるところにいたころの ものがたり/Story of the Time When Gods were Everywhere」なども展示。インタラクティブアートでありながら、遊べる要素を持った作品に子供も大人もつい夢中になって挑んでしまう。
ディズニーが90年近く作り続けてきたアニメーション作品の原画やコンセプトアートが集まった「ディズニー・アート展《いのちを吹き込む魔法》」が、東京・お台場にある日本科学未来館で9月24日まで開かれている。その会場に8月1日から登場した「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ 塔の上のラプンツェル エクスペリエンス」powered by teamLabも、チームラボの手になる作品。ディズニーのアニメーション映画として2010年に作られ、日本では2011年に公開された「塔の上のラプンツェル」のワンシーンに入り込んだような体験ができるインスタレーション作品だ。
日本科学未来館の7階に作り上げられた空間に入ると、そこには天井から幾つものランタンがつり下がっている。塔に閉じ込められたラプンツェルが外に出て、ゴンドラの上で周囲から集まって来た光り輝くランタンを眺めるシーンを再現したかのよう。薄暗い部屋の中をぼんやりとオレンジ色に輝くランタンの列が無限に広がって見えるのは、部屋の四方が鏡張りになっているから。そんな部屋でランタンに近寄ると、ランタンが明るく輝き出す。
誰かを思う自分の気持ちがランタンに伝わったかのよう。輝きは周囲のランタンへと伝わって次々に光を放っていく。鏡張りとなっているため、輝きが無限の彼方へと広がっていくようにえる。自分の思いがランタンを通して世界へと拡散し、誰かの心に届く可能性を感じさせてくれる作品と言えそう。
チームラボ カタリストの竹内正人さんは、制作にあたってディズニー側から「オレンジ色の赤みが強いとか、ランタンのプロダクトも映画とサイズが違うといった要望があった」ことを明かした。作品世界を徹底して守ろうとするディズーらしい要望だが、チームラボはこうした課題を見事にクリア。最終チェックに数日を予定したのが1日で済んでしまったくらい、完璧な仕上がりのものを提供した。
「塔の上のラプンツェル」日本語吹き替え版でラプンツェルの声を演じた中川翔子さんも、作品を体験して「リアルにラプンツェルの世界が再現されていて、ラプンツェルになったみたい」と話して、映画の世界をそのまま再現した技術力の高さ、作品そのものの素晴らしさを讃えていた。「ディズニー・アート展《いのちを吹き込む魔法》」の入場者は同じチケットで観覧できる。
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