VR体験できるアミューズメント施設が都内に続々登場
暑い日差しも突然の豪雨も気にせず遊べる屋内型のアミューズメント施設で、VR(仮想現実)体験ができるところが東京都内に増えて来た。バンダイナムコエンターテインメント(東京都港区)が東京都新宿区にオープンした「VR ZONE SHINJUKU」は、100台近いVR機器が並んで、来場者を居ながらにして釣り場やスキー場、アニメーションの世界へといざなう。東京スカイツリー直下の東京ソラマチには、コニカミノルタプラネタリウム(東京都豊島区)が宇宙空間へと連れ出してくれるVRを設置。ほかにも各所にVRが体験可能な施設ができて、今までとは違った夏を過ごさせてくれる。
VRヘッドマウントディスプレーを装着し、右手に釣り竿のようなコントローラーを持って立つと、目の前には緑に囲まれた池が見える。釣り竿を振ると、視界の中ではルアーが飛んでいって池に落ちる。魚が食いつくと釣り竿が引かれる感じになるため、リールを巻いてルアーをたぐり寄せ、近づいてきた魚を左手に持った網ですくい上げる。
「VR ZONE SHINJUKU」に導入された「釣りVR GIJIESTA」は、歌舞伎町のど真ん中で本格的なルアーフィッシングを楽しめるVRアクティビティ。磁性流体によって魚の重さや引く勢いを細かく再現する新開発のコントローラーが、リアルな映像とともに体験者に本当に釣りスポットに立っている感じを与える。
マリオカートや新世紀エヴァンゲリオン、ドラゴンボールといったゲームやアニメの世界に張り込み、カートを運転したり迫ってくる敵を倒したり、気を練り上げて放ったりといった夢のような体験もできる「VR ZONE SHINJUKU」。7月15日にオープンから連日大賑わいとなっている。
観光なら歌舞伎町に負けていない東京スカイツリー。その直下にある東京ソラマチに、スカイツリーより高い場所へと行けるVR機器が登場した。コニカミノルタプラネタリウムが6月26日にオープンした「コニカミノルタ VirtuaLink in 東京スカイツリータウン」は、家庭用VRヘッドマウントディスプレーのプレイステーションVRを使ってVR体験を提供する施設。卵の一部を切り取ったような形の白いポッドが並べられ、体験者はそれぞれのポッドに作られたシートに座ってプレイステーションVRを装着し、全員で同じコンテンツに入っていく。
第1弾コンテンツのVRスペースアドベンチャー「ワンダーポッド」は、宇宙空間から星空を見るというもの。地表から見上げた夜空をドーム空間に投影することが多いプラネタリウムとは違い、地球から少し離れた宇宙空間に自分がいて、そこから周囲を見渡す感じになる。コニカミノルタプラネタリウムでは、東京・お台場にも「コニカミノルタ VirtuaLink in ダイバーシティ東京プラザ」を7月24日にオープン。全国各地にも同じような施設を展開して、ゲームとは違ったVR体験を広げていく。
7月15日にCAセガジョイポリス(東京都品川区)が運営する屋内型テーマパークの東京ジョイポリスに導入されたのが、自由に動き回れるフリーローム型VRとして話題を集めている「ZERO LATENCY VR」の新作ソフト「SINGULARITY」。ゾンビを相手に戦って生き延びる前作の「ZOMBIE SURVIVAL」とは内容が一変。連絡が途絶えた宇宙ステーションに特殊部隊の一員として潜入して、襲ってくるロボットやドローンを相手に戦い脱出を目指すSF的なストーリーを楽しめる。
PCが入ったバックパックを背負い、VRヘッドマウントディスプレーをかぶってヘッドフォンを着け、手に銃を持ってプレイする点は「ZOMBIE SURVIVAL」と同じだが、VR空間に入ってからは、チームを組んだ最大6人のメンバーが、そろって移動していく点が新しい。敵もロボットやドローンで、メンバーがコミュニケーションを取って、四方八方から迫ってくる敵を銃で撃って倒し、脱出を目指す。プレイ後は、入場時に入力したメールアドレスに成績が送られてくるため、何が悪かったかを確認し、また挑みたくなる。
ほかにもハウステンボス(長崎県佐世保市)やアドアーズ(東京都港区)といった事業者が、アミューズメント施設への導入を進めているVR。元年と言われた昨年以上に急激なスピードで広がっているが、どのような分野でも、普及・浸透が進むほどさまざまな問題が見えてくる。VRアトラクションの場合は、遊園地のアトラクションのように安全に遊ぶことができるか、話題になっているVRを子供も楽しむことはできないのか、などといった問題が、これから先の展開に影響を及ぼしそう。
これに対して業界関係者が集まって、解決策を検討していくための組織が今年5月に発足し、7月18日に発表会見を行った。一般社団法人ロケーションベースVR協会で、正会員には「VR ZONE SHINJUKU」を展開しているバンダイナムコエンターテインメント、業務用ゲーム機とアミューズメント施設運営を手掛けるタイトー(東京都新宿区)、ベンチャーとしてVRアトラクションを開発しているハシラス(東京都千代田区)などが名を連ねている。代表理事はハシラス代表の安藤晃弘氏で、事業者同士が情報交換を行い、ロケーションベースVRの規格化、統一基準、ガイドラインの作成及び普及などに取り組んでいく予定だ。
タイトーやバンダイナムコなど老舗のゲーム企業は、アミューズメント施設運営の経験が豊富で、利用者に安心して遊んでもらうためのノウハウを持っているが、VRの場合は、視野をふさいだ状態で動くことも多く、どこに危険性があるかを検討する必要がある。新しいテクノロジーを積極的に取り入れ、今までとは違った製品やサービスを生み出す事業者はベンチャーも多い。新興勢力の開発ノウハウと、老舗企業の安全性確保や運営に関する検討成果を合わせることで、より安全で楽しいVR体験を、街中のアミューズメント施設でも提供できるようになる。
視力や成長への影響から、13歳未満は体験させないことが多いVRが、実際に人体に及ぼす影響の医学的な検証も、協会が中心となって進めていくことで、統一した見地を元にした事業展開が可能になる。世界的に成長分野として期待されながら、不測の事態を受けて停滞してしまうこと避け、ロケーションVRが大きな産業となり、新しいエンターテインメントとして定着していくためにも、協会の活動に期待がかかる。
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