サントリー美術館・久保佐知恵さん 温度などに配慮し作品管理

私の仕事
「休日は、他の美術館に行くことや家で編み物をするのが好き」と話す久保佐知恵さん

 東京・赤坂の東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で、学芸員として、展示会の企画や絵画、陶芸品をはじめとする美術品の保管を担当している。

 主な仕事は国宝や重要文化財を含む約3000点の美術品の管理だ。傷まないように専用倉庫に保管している。鎌倉時代の螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)を施した手箱や江戸時代に描かれた浮世絵やびょうぶなどもある。

 絵などは乾燥に弱く、長時間置かれると「絵が描かれた紙が縮んでしわになったり、割れたりすることがある」。反対に湿度が高いところではカビが生える恐れがある。このため常に倉庫内の温度や湿度を確認する。

 作品は展示するほか他の美術館にも貸し出す。その前に破損個所がないかよく点検する。絵画ならば、絵の具のはがれなどがないかを見る。

 「ライトで斜めに光を当てて小さな傷がないか、確かめる」。傷みがあれば、専門家に修理してもらう。

 作品を研究し、新しい発見を発表するのも仕事の一つ。「絵の中の登場人物はだれか。作者はどんな思いで描いたのか。そこから広がる物語を探す」

 うれしかったのは、若い学生が一つの絵の前で30分もじっと見ていたときだ。「お客さまが引きこまれる作品に出会う場所を作りたい」という。

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【プロフィル】久保佐知恵

 くぼ・さちえ 早大大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。2013年からサントリー美術館に勤務。31歳。東京都出身。