社内意識変化が成否の鍵 リクルートなど働き方改革で効果

 
子供と一緒に通えるリクルートホールディングスのオフィス=2月、東京都港区

 3月中旬に集中回答日を迎える今春闘は、効率良く働き、余暇や子育ての充実を目指す「働き方改革」も重要なテーマになっている。先駆けて取り組んだ職場では試行錯誤の末、業務改善の効果も表れ始めている。成否の鍵は仕組みづくりだけでなく、どれだけ社内の意識を変えられるかにありそうだ。

 リクルートホールディングスは2016年10月、社員が子供と一緒に通えるオフィスを東京の品川駅近くに開いた。ガラスの仕切りの向こうで保育士資格を持つスタッフが面倒を見てくれる。月1、2回、5歳の長男と通勤する赤井枝里子さん(36)は「普段はあまりかまってあげられていないと感じていたが、気が楽になった」と話す。

 同社は平均で50分程度かかっている通勤時間がもったいないとして、16年1月に会社以外の場所で自由に働ける制度を導入した。だが「自宅は子供の世話で落ち着かず、カフェも電話しづらい」と不満が相次ぎ、急ピッチで首都圏の約40カ所にオフィスを用意した。品川の保育併設型は実験的な取り組みだが利用実績を踏まえて拡大を検討する方針だ。

 カルビーは10年、コンピューターが日ごとに座席を決める「フリーアドレス制」を250人が働く本社(東京都千代田区)に導入した。「人は横には動くが、縦には動かない」。ビルの各階に部署が分かれ、連携に壁があると感じた松本晃会長の鶴の一声だった。

 当初は「部下がどこにいるか分からない」などと混乱した。だが今では社員は出社すると慣れた様子で端末を使ってその日の働き方を選び、指定された席に着く。4人が向かい合う「コミュニケーション」や、仕切りがあり私語と携帯電話が禁止の「集中」といった具合だ。隣に座った違う部署の人の相談に乗るなど、社内業務のやり取りが速くなり、仕事の効率化につながったという。

 味の素は18年度に、1日の所定労働時間を現在より35分少ない7時間に減らす目標を掲げる一方、家計への影響を見越して来月から全社員の月給を一律で1万円引き上げる。業務効率化で残業が減るのはうれしいが、収入も減ってしまうのではないかと懸念する声が少なくないことに配慮した。

 浮いた時間で自己研鑽(けんさん)に励んでもらうのが狙いで、優秀な人材を確保するための先行投資の意味合いもある。西井孝明社長は「リーダーシップを持って長時間労働の解消の必要性を訴え、社員の意識を変えていかないといけない」と話す。

 中央大大学院の佐藤博樹教授(人事管理)は「働き方改革の目的は長時間労働の削減だけでなく、時間意識の高い働き方の実現と多様な人材が活躍できる職場づくりで、3企業の取り組みは評価できる」としている。