ヤマト、27年ぶり全面値上げ検討 競合追随か 宅配転換期、品質維持に苦悩

 
ヤマト運輸は、料金を含めて宅配サービスの抜本的な見直しに動き出した

 宅配便最大手のヤマト運輸が9月末までに、個人顧客分を含めた配送運賃を全面的に値上げする方向で検討に入ったことが7日、分かった。全面値上げは消費税増税時を除けば27年ぶりで、法人向けに繁忙期の割増料金も検討する。既にインターネット通信販売大手アマゾンジャパン(東京)など大口顧客数社と値上げ交渉に入っており、最大手の動きに競合各社が追随する可能性もある。

 ネット通販の拡大による荷物個数の増加を背景に、ドライバーらの人手不足が深刻化しており、繁忙期を中心に外部業者に配達を委託するコストも経営を圧迫していた。ヤマト運輸は宅配サービスの品質を維持するにはコストに見合った値上げが不可欠と判断した。

 具体的な値上げ幅は交渉の進展を見ながら詰める。宅配便の基本運賃は関東から関西に配送する場合、重さが2キロまでなら864円からで、法人向けは基本運賃から荷物量などに応じて割引を適用している。

 消費税率が5%から8%に上がった2014年4月には税率の引き上げ分を料金に転嫁したが、今回は基本運賃を改定し、全顧客に値上げを求める。

 加えて、現在は発送元と送り先の設定エリアを関東や関西などのブロック別に分けて料金を設定しているが、法人向けではこれを都道府県別のきめ細かな料金設定に見直す。年末年始などの繁忙期には割増料金も求めていく。

 一方、従業員の働き方改革については、正社員の労働時間の年間目標を引き下げる方針を固めた。このほか、時間帯指定サービスのうち「正午~午後2時」を廃止して従業員が昼食休憩を取りやすくする。夜の配送時間は「午後8~9時」を「午後7~9時」に広げて配送時間に余裕を設けるほか、将来的には配達終了時間の繰り上げを検討する。

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【用語解説】ヤマト運輸の宅配運賃

 同じ地域を発着地とし縦、横、高さの合計が60センチ以内、重さ2キロまでの場合は定価756円。荷物が大きくなったり、宛先が遠くなったりするほど運賃が上がる。生鮮食品などを保冷状態で運ぶクール便や夕方までに預かった荷物を翌朝に届けるタイムサービスには割増運賃が必要。午前中から夜間まで細かく分かれている時間帯指定や再配達は無料。ヤマトの宅配便取り扱い個数は2016年4月から17年2月までの累計で17億個を超え、17年3月期は過去最高を更新するのが確実だ。