脱自前主義「体験」シフト 苦況の総合スーパー、改装や外部連携
業績不振で店舗の大量閉鎖に追い込まれた総合スーパーのユニーとイトーヨーカ堂が、衣料や日用品など直営の売り場にこだわる自前主義から脱却する姿勢を鮮明にしている。店舗改装で外部テナントとの連携を強化し、飲食や健康づくりなど体験型の「コト消費」の充実へ知恵を絞る。
ユニーは23日、改装した名古屋市のアピタ新守山店を公開した。2階フロアの半分程度を占めていた自前の日用品売り場が「草叢BOOKS(ブックス)」に生まれ変わった。書店やカフェ、子供の遊び場、ヨガ教室が一体となっている。
イメージ刷新に導いたのは、CDレンタルや書籍販売の「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)だ。ソファやいすを配した「滞在型書店」を核とする複合施設を東京や大阪で手掛け、女性や若い家族の話題を集めている。ユニーは「改革を進めてきたが、顧客に響かなかった。フルモデルチェンジが必要だ」(浅井和彦上席執行役員)として運営を委託した。
配管がむき出しの天井や間接照明で写真映えするおしゃれな空間を演出。2歳の娘と訪れた主婦(34)は「雰囲気が良く、子供も満足そうでうれしい」と語った。
相模原市の橋本駅そばには、ヨーカ堂が事業再建のモデルと位置付ける大型施設のアリオ橋本がある。昨年11月の改装で自前の紳士服売り場などを縮小、テナントの配置も既存店同士の相乗効果が出るよう見直した。周辺に競合施設が多く、人気店を寄せ集めるだけでは集客力が長続きしないと考えたからだ。
点在していた旅行や保険、携帯電話店などをまとめ、同じ区画にセブン&アイグループの新業態の喫茶店を出した。待ち時間を退屈せずに過ごせるし、コーヒーを片手に相談もできるという。
ベビー用品店などがある区画は、天井や壁全体にアート作品を描き、思わず子供の写真を撮って会員制交流サイト(SNS)に投稿したくなる仕掛けもつくった。フードコートは靴を脱いでくつろげる席も設け、平日の昼も若い家族でにぎわう。
改装で客数と売上高は14%増えた。渡辺雅人所長は「どれだけ日常生活の一部になれるかが重要だ」と、地域密着の運営で上積みを目指す。
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