セブン&アイ、“フレッシュ”と言い難い新体制 創業家回帰で「本丸」再生へ

 
セブン&アイのグループ新体制の顔ぶれ

 セブン&アイグループの新経営体制が固まった。中興の祖の鈴木敏文氏が第一線から去って約7カ月。井阪隆一社長が主導する改革は創業家回帰が鮮明となり、本丸である総合スーパー、イトーヨーカ堂の再生に移る。ただ新体制は比較的高齢で、カリスマに長く依存した弊害から世代交代が難しくなっている内情もにじむ。

 「赤字解消にめどがついた。若い人に道を譲る」。ヨーカ堂の亀井淳社長は12日朝、晴れやかな表情を見せた。

 亀井氏は昨年1月、業績不振で引責辞任した当時の社長の後任に顧問から急遽(きゅうきょ)復帰し、鈴木氏が力を入れた事業やブランドを容赦なく廃止した。セブン&アイ・ホールディングス(HD)幹部は「収益改善への意地がすごかった」と明かす。

 亀井氏からバトンを受ける三枝富博常務執行役員は1997年の中国・成都へのヨーカ堂出店に計画当初から参画。事業を成長に導くなど実績は折り紙付きだ。

 しかし任された仕事は容易でない。ヨーカ堂は創業事業だが、ファストファッションなど専門店人気に押され収益が低迷している。

 「商品が良ければ業態は関係ない」が持論の鈴木氏の「鶴の一声」で百貨店のそごう・西武との相乗効果を目指したものの、共同開発のワイシャツが大量に売れ残るなど、てこ入れ策は不発に終わった。総合スーパーは基本的に子育て世代を重視する事業モデルのため人口減少とともに衰退に歯止めがかからない状況だ。

 三枝氏を支え、改革への本気度を示すため、井阪氏は「あっと驚く人」(関係者)を取締役に送り込んだ。自身の側近で、創業者の伊藤雅俊名誉会長の次男順朗氏だ。

 順朗氏は昨年12月、HDの取締役常務執行役員に昇格し、グループ改革を担う経営推進室長になった。一方、鈴木氏が後継者にもくろんだとされ、人事抗争の火種になった次男はグループから去った。

 セブン&アイは内紛で取締役会が真っ二つに割れた経緯から、昨年5月の井阪体制発足時は人事を最小限にとどめ、社内融和を演出した。

 だが新体制は三枝氏が67歳、セブン-イレブン・ジャパンやそごう・西武の社長も井阪氏より年上の60代でフレッシュとは言い難い。別のHD幹部は「経営の人材が育っていない」と嘆く。

 事実上「コンビニ1本足」が続くグループ経営を、再び成長軌道に乗せられるか。鈴木氏の影響力排除に時間を割かれてきた井阪氏らは正念場を迎えている。