ユニーク茶を開発、ブランド強化 ルピシア・森重かをり社長

 

 ルピシアは世界各地の茶園から紅茶、緑茶、ウーロン茶、ハーブティーなど年間400種類以上を直接買い付け、自社工場で製品化して小売りまで手掛ける。創業以来、顧客目線に立って生産者や産地の情報をできる限り情報公開し、個性的な新商品を開発している。今年10月、2代目社長に就任した、森重かをりさんは、斬新な商品投入やブランド力強化を目指している。

 森重さんは大学院で分子生物学を専攻し、資生堂に入社、基礎研究、商品企画などに携わる。結婚を機に退職し、弁理士を目指したものの、次第に仕事をしたいという気持ちが強くなり、新聞に求人広告を出していた紅茶専門小売店のレピシエ(現ルピシア)に1999年入社する。

 同社は94年の設立。森重さんが入社したころには、すでに約30店舗を展開し、自社工場も運営して伸び盛りだった。さらなる成長を目指して独自商品の開発強化に乗り出したころで、新設されたばかりの商品部スタッフとして採用された。

情報公開さきがけ

 部長1人と新たに採用された3人の小さな所帯では、これまで経験したことのない幅広い仕事を担った。1カ月間の店舗での研修を終えて、さっそくクリスマス向け商品の開発に取りかかった。

 市場調査をしてニーズをつかみ、商品コンセプトをつくっていくのが、資生堂時代の商品企画の仕事だった。しかし販売計画策定や原価計算、工場への製造指示など、それまで未経験だったことも手掛けなければならない。「資生堂ではチーム分業だったが、全てを自分でやらなくてはならなかった。大変だが面白かった」と振り返る。

 フロンティア精神あふれる社風も刺激的だった。あるとき水口博喜社長(現会長)から「ハーブはフランスやドイツが本場だ。買ってきなさい」という一言で現地に買い付けに行った。

 従来、茶葉は店頭では銘柄と価格しか示されていないのが大半だった。しかし同社は品種、産地、農園、ロットなど細かい情報を公開している。今では当たり前のことのようになっているが、生産者の顔が見えるような商品アピールのさきがけともいえる取り組みだ。その後、紅茶だけでなく緑茶、ウーロン茶など東洋の茶葉も取り扱うようになる。

ダンスで盛り上げ

 「自分で全て手掛ける」という社風は商品開発以外にも発揮されている。

 会員に届ける月1回発行の会報「ルピシアだより」の企画編集は全て内製化している。全国各地で開く自社製品の試飲会では1カ所で平均1万人を集客する。ここでもイベント事業者の手を借りずに自社のみで運営する。

 「世界のお茶を楽しむイベント」を盛り上げようと、インド・ダージリンへの買い付けに同行したスタッフが、生産者から習った豊作を祝うダンスを披露して来場者の目を引きつけるなど、自由な発想の創意工夫が浸透している。

 森重さんは「魅力ある商品を開発し社員教育を強化することで、ブランドを強化する」と新社長としての抱負を語っている。

【プロフィル】森重かをり

 もりしげ・かをり 東工大大学院修了。1993年資生堂入社。99年レピシエ(現ルピシア)入社。常務取締役営業本部長などを経て、2016年10月から現職。48歳。東京都出身。

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【会社概要】ルピシア

 ▽本社=東京都渋谷区代官山町8-13 代官山ハマダビル

 ▽設立=1994年8月

 ▽資本金=2億1700万円

 ▽従業員=1273人(2016年6月末時点)

 ▽事業内容=お茶・茶器雑貨・菓子類の輸入製造販売