カローラ、次の50年へ新機軸 最大の課題克服へ「かっこいいクルマに挑戦」

 
トヨタ自動車の米国ミシシッピ工場で生産される「カローラ」。ブランドの位置づけは世界でさまざまだ

【カローラ半世紀】(下)

 ■「乗って楽しく見た目かっこよく」

 「地球人の幸福と福祉のためのカローラを」-。

 トヨタ自動車で初代カローラの開発主査を務めた長谷川龍雄氏(故人)が残した言葉は今も開発陣の胸に刻み込まれている。世界の人々の暮らしに役立つ最量販車であり続けるという志で、託された使命は後生に脈々と受け継がれている。

 日本で初代カローラが発売された1966年、「地球人のためのクルマ」として早くも海外展開が始まった。まず豪州向けの輸出を開始し、米国、カナダにも拡大。68年にはマレーシア、豪州での生産が始まり、その後も南アフリカやトルコなどへと広がった。今年8月時点では、世界16拠点の工場で生産。販売エリアは世界154カ国に達し、年約130万台以上を売るトヨタの「最量販車」としての地位を盤石にしている。

 しかし販売エリアが広がったことで、難題も抱え込んでいる。先進国でも新興国でも受け入れられる新型カローラの開発がより強く求められているからだ。

 世界では同じ「カローラ」ブランドでも位置づけはさまざまだ。米国では一般大衆車として使われ、ロシアや中国では中間層のファミリーカー、ブラジルやタイでは富裕層の高級車-と、地域によって購入者も利用目的も大きく異なっている。

 多種多様なニーズにどう応え、最量販車として、どうよりよいクルマに仕上げていくか。それが目下の最大の課題だ。その難題解決に次のカローラ、12代目の開発を担当する小西良樹チーフエンジニアは「扱いやすさなどの強みを残しながら、乗って楽しく見た目にもかっこいいクルマに挑戦したい」と話す。先代が築いた安心、安全などの伝統に、デザインを含めた新機軸を打ち出し、既存顧客だけでなく、新規顧客の開拓につなげるのが目標だ。

 とりわけ所有者の平均年齢が高くなっている日本の仕様では、若者への訴求力を高める必要があると見る。世界ではトヨタの最量販車でも、日本では2007年を最後に販売首位から遠ざかっており、ブランドを支える新たな担い手の掘り起こしが急務だからだ。

 英語で「花冠」を意味するカローラは、この半世紀に世界で4400万台を販売するなど自動車市場で大きな花を咲かせた。さらに次の50年に向けどんな大輪を咲かせるのか。歴代開発陣の「100年ブランドが続いてほしい」(6、7代目開発担当の斎藤明彦氏)との願いも乗せ、カローラ物語の新章が幕を開ける。(この連載は今井裕治が担当しました)