「関西スーパー」の株式取得に業界激震 “関東の華麗なる一族”オーケーの狙いは
関西で展開する食品スーパーの関西スーパーマーケットの周りがにわかに騒がしくなってきた。9月に入り、首都圏が地盤の食品スーパー、オーケー(東京都大田区)が関西スーパーの発行済み株式を大量に保有していることが判明したからだ。オーケー側は株取得の具体的な目的を明らかにしておらず、関西スーパーも公式な見解を出していない。東西の中堅スーパーの今回の動きには謎も多く、両社の動向に注目が集まっている。(大島直之)
お祝いムード一変
8月9日、関西スーパーマーケットは、創業の地である兵庫県伊丹市の本社社屋の建て替えを終え、1階部分の店舗「中央店」をリニューアルオープンした。しかし、1カ月もたたないうちにお祝いムードは一変することになった。
オーケーが9月1日に関東財務局に提出した大量保有報告書によって、関西スーパーの発行済み株式の5・60%を取得したことがわかったのだ。関西スーパーの大株主としては、取引先持株会(3月末時点で10・07%)に次ぐ2位株主となったもようだ。
さらに衝撃は続く。翌2日にオーケーが再び提出した大量保有報告書で、関西スーパー株の保有比率を8・04%に引き上げたことが判明。大量保有報告書に記載された保有目的については「重要な提案をする」とあるものの、オーケーはその提案内容を依然明らかにしないままだ。
オーケーによる株式取得が判明した直後から、関西スーパーの株価は急騰。1株1千円前後で推移していた株価は一時1900円台にまで跳ね上がった。市場ではオーケーがさらに株式を買い増し、経営権を握るのではないかとの思惑も広がり、投資家の買いを誘った。
株取得の狙いは
オーケーによる関西スーパー株取得の狙いは、買収や資本提携など経営権をめぐるものなのだろうか。流通業界の関係者も首をかしげる。両社にこれまで取引実績はない。商品の共同調達などの協業メリットも考えられるが、すでに業界内には連携グループが複数あるため、2社による提携効果も限定的だ。今回の動きについて、関西スーパー幹部も「まったく心当たりもないし、ビジネス上の関係もない」と戸惑いを隠せない。
伊丹市に本社を置く関西スーパーは大阪、兵庫を中心に約70店を展開し、地元密着の「ドミナント戦略」で強固な経営基盤を築いてきた。平成28年3月期の連結売上高は前期比1%増の1200億円。他社との競合や消費者マインドの低迷から業績は伸び悩み、29年3月期の売上高は微減の1198億円を見込む。
また、関西スーパーは共同で調達や研修などを行う全国組織の業界任意団体「オール日本スーパーマーケット協会(AJS)」の発展に尽くした中心メンバーだ。現在もグループでは中核的役割を担い、業界内でも存在感を持つ。
一方、オーケーは首都圏を中心に約90店を展開する中堅食品スーパーで、28年3月期の売上高は前期比8・9%増の3074億円。米ウォルマートを手本に「エブリデー・ロープライス(EDLP)」を掲げ毎日安値で販売するというスタイルが特色だ。チラシを配り、特売品で客を集める一般的なスーパーとは異なる戦略で安定的に業績を伸ばしてきた。
華麗なる経営者一族
一方で、オーケーといえばオーナー一族の華麗なる経歴が知られる。オーナーの飯田家は、オーケー会長を含む3人の兄弟がいずれも経済界で活躍する。オーケー創業者で会長の飯田勧氏の兄の保氏は居酒屋チェーン「天狗」を展開するテンアライド、弟の亮氏は大手警備サービス「セコム」をいずれも創業し社長を務めた。サラリーマン社長ではなく、創業社長であり経営者としての才覚をフルに発揮してきた。
今回のオーケーの狙いについて、関西スーパー、オーケー両社と大口の取引実績がある食品商社の幹部も「意図は全く分からない」という。一方で、強力なリーダーシップを持つオーナー企業であるオーケーがいずれ何らかの動きを仕掛けるとの見方もある。
スーパー業界は、価格競争の激化で各社とも厳しい経営環境にある。前期の業績では売上高が伸びた社もあるが、生鮮や穀物の価格高騰による価格転嫁があったことが要因で、利益面で厳しい事業環境であることに変わりない。オーケーと関西スーパー。東西の中堅スーパーが今後どんな展開を見せるか。しばらく目が離せない。
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