AR・VR、ゲーム外に拡大 教育・観光、スポーツ 市場40倍も

 
KDDIが企画した仮想現実(VR)を使った「課外授業」=8月31日、東京都渋谷区(KDDI提供)

 スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」などで注目を集めている拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の技術が、ゲーム以外の分野にも広がり始めている。既に教育や観光などの分野では導入が進んでいるほか、新しいサービスも続々と登場しており、市場も飛躍的に拡大すると予測されている。

 東京・表参道の路上で8月末、VRを利用して歴史を学習する「課外授業」が開かれた。KDDIが始めたプロジェクト「タイムトリップミュージアム」だ。

 都内の中高生が参加。装着したゴーグル型のVR端末には360度の視界が広がり、関東大震災や太平洋戦争、戦後の復興を経て、若者文化が根付く過程が描かれる。目の前の街並みが100年間でどのように変わってきたかを、当時に戻ったかのような感覚を味わいながら体験できる仕組みだ。学校の担当者は「すぐに導入するには課題もあるが、世界史の学習など活用の道は多い」と期待する。

 プロ野球の楽天イーグルスも打撃練習にVRを取り入れた。チームが持つデータを活用し、対戦相手の投手が投げるボールの軌道などを再現、実際に打席に立った感覚で繰り返しトレーニングできる。システムを開発したNTTデータは、米国などの海外チームにも売り込んでいくという。

 一方、ソフトバンクはARを使った観光サービスを展開している。神奈川県の箱根町観光協会と連携し、町にゆかりの人気アニメ「エヴァンゲリオン」を生かした取り組みを進めている。名所を巡るスタンプラリーのスポットでスマホの専用アプリを起動させると、画面上では現実の風景の中にエヴァンゲリオンのキャラクターが現れる。これまでにない楽しみ方で、外国人観光客にもアピールできるという。

 三菱総合研究所は、VRやAR向け機器の市場規模が、2015年の計約2350億円から、10年後の25年には40倍近い8兆8000億円まで拡大すると予想する。関連するソフトやサービスは25年には最大で7兆円を超えると見積もる。

 有望市場でのシェア獲得を目指し、ソニー・インタラクティブエンタテインメントは来月、ゴーグル型の「プレイステーション(PS)VR」を世に出す。マイクロソフトもVR端末の発売を計画しており、世界的な競争になるのは間違いない。VRやARは小売りや医療などでも活用が期待されている。

 ゲームアナリストの平林久和氏は「普及が進めば将来的にはわれわれの生活を変える力を持っている」と強調している。