三越、千葉・多摩店の閉鎖発表 ネット通販台頭、ライフスタイル変化

 

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は7日、三越千葉店(千葉市)と三越多摩センター店(東京都多摩市)を2017年3月20日で閉店すると発表した。不振が続いている地方や郊外の店を整理して、都心の旗艦店の経営に集中する。

 千葉店は1972年に地元百貨店と合弁会社を設立し、「ニューナラヤ」として開業。84年からは看板を「三越」に変更していた。JR千葉駅から近い立地を生かして、ピーク時の91年度は507億円の売上高を記録。ここ数年は近隣の大型商業施設との競争激化やインターネット通販などに押され、赤字の状態が続き、16年3月期の売上高は約4分の1となる126億円まで落ち込んでいた。

 2000年に多摩そごう跡の商業施設に開業した多摩センター店も、千葉店と同様に近隣の大型商業施設などとの競争が激化。07年度には70億円あった売上高も16年3月期は63億円と1割程度減少し、赤字となっていた。

 「時代が変化した」。三越伊勢丹HDの杉江俊彦専務執行役員は、7日の会見で2店舗の閉鎖を決めた理由をこう説明した。

 百貨店を取り巻く環境は厳しさを増している。日本百貨店協会によると、15年の百貨店の売上高は6兆1742億円と、ピーク時の1991年(9兆7130億円)に比べ36%も減少した。

 売上高の減少は、コンビニエンスストアやショッピングセンターの台頭に加え、少子高齢化などでライフスタイルに変化が生じたからだ。アマゾンジャパンを中心にネット通販市場が拡大していることも、売り上げの減少に追い打ちをかけた。

 それでもアベノミクスによる株価上昇で高額品を中心に消費が一時回復したことや、増加する訪日外国人の旺盛な需要を背景に、ここ数年は売上高の減少に歯止めがかかっていた。

 しかし、そうした“追い風”にも変化が生じている。年明け以降の株価低迷で、時計や宝飾品、高額ブランド品の消費に陰りが見える。頼みの綱だった中国人による“爆買い”も鈍化。化粧品など単価の低い商品に売れ筋が移り、7月の訪日客1人当たりの購買単価は前年同月と比べ3割も下がった。

 杉江氏は追加の店舗閉鎖について問われると、「可能性はあるが、今は検討していない」と述べた。百貨店は節約志向や生活様式の多様化といった環境変化に十分に対応しているとは言い難く、今後も店舗閉鎖が広がる恐れがある。(永田岳彦、大柳聡庸)