重工各社、価値提案強化で海外勢に対抗 IoT、AI技術取り込み

 
重工各社はIoTやAIを駆使した保守サービスに力を入れている。写真は三菱重工業・相模原製作所の遠隔監視センター(同社提供)

 川崎重工業など重工各社が、IoTやAI技術の取り込みに積極的なのは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど海外勢が、先行して付加価値の高いサービス提案をしているためだ。

 GEは航空機エンジンにセンサーを搭載し、故障予知や燃料コストを削減するサービスを展開している。シーメンスも独自のビッグデータ解析システムを開発し、顧客へのサービス提案を強化している。

 重工業の分野では、従来のように顧客の注文通りに「ものづくり」をするだけでは差別化を図れず、納品後に有効なデータを提供するサービスの重要性が増している。保守・運用を充実して顧客と長い付き合いを構築し、次の受注につなげる狙いもある。

 こうした動きが世界的に加速する中、日本勢も対応を急いでいる。三菱重工業は重要インフラのセキュリティー確保でNTTと提携した。米IBMのAI「ワトソン」の導入も検討する。宮永俊一社長は「他社との提携で対応を急ぎたい」と危機感を募らせる。

 一方、航空機エンジンや橋梁(きょうりょう)など手掛けるIHIもグループ共通の情報基盤を整備している。4月にはIoTを推進する部署の人員を倍増した。製品の稼働状況の遠隔監視や故障予兆を検知するサービスを各事業部に広げる方針だ。日立製作所や東芝もIoTやAIの取り込みに力を入れている。政府はIoTやAIなど次世代技術を活用した「第4次産業革命」の推進を成長戦略に掲げるが、米国やドイツに後れをとっている。国内の重工各社としても対応が遅れれば、GEやシーメンスとの差が開く可能性もある。(黄金崎元)