ローソンやイオンなど異業種勢、「介護サービス」に相次ぎ参入

 
専門家による介護相談窓口があるローソンの店舗=さいたま市

 介護関連市場への異業種参入が目立ってきた。コンビニエンスストア大手のローソンは、介護支援が専門のケアマネジャーが常駐する店舗を増やし、大手損保が介護事業者を子会社化するなど再編の動きもある。公的介護保険制度の施行から16年、人口減でも成長が見込める数少ない市場をめぐり、企業の動きが加速している。

 「おむつはどれがはきやすいかしら」「おいしい介護食はどれ」。さいたま市のローソンさいたまシティハイツ三橋店には、介護のあらゆる相談に応じる窓口がある。

 関連商品を集めた棚には介護用品や介護食、高齢者向け栄養補助食品など約80品目が並ぶ。車いすでも通れるよう通路を広くし、血圧や血管測定などの機器も備えた。

 ケアマネの永井由実子さんによると「1人で介護していてもう限界。どうすればいいのかといった深刻な相談もある」。必要に応じて介護計画を作成、介護保険のサービスにつなぐ。立ち寄った女性(69)は「いつ介護が必要になるか分からない。近くに相談できる所があると安心」と話した。

 同店は、地元の介護事業者がフランチャイズ契約を結んで経営。ローソンによると、こうした介護拠点を併設する店舗は昨年4月以降、新潟県上越市、大阪府東大阪市、北九州市など6カ所でオープンし、2017年度末までに30店舗に増やす予定だ。「地域での役割に加え、高齢化した顧客のニーズに応えるのが狙い」と担当者は話す。

 介護事業そのものに乗り出す大手企業も増えた。イオンは店舗内などのリハビリ専門デイサービスを4カ所から20年までに50カ所にすることを目指す。パナソニックは介護事業を統合した新会社を4月設立。サービス付き高齢者住宅を150カ所、在宅介護サービスの拠点を200カ所に広げる方針だ。損保ジャパン日本興亜ホールディングスも事業者の買収や子会社化を進める。

 一方、国は伸び続ける介護保険の給付抑制のため介護報酬を引き下げ、介護の必要度が低い人を対象にした保険からの切り離しや利用者の負担増も検討中だ。日本総研の斉木大シニアマネジャーは「報酬が下がっても介護需要は増え続けるので、売り上げは見込めると考える企業は少なくない。保険外サービス需要への期待もある」と話している。

 介護保険の制度設計に提言をしてきたウェル・ナビ(東京)の阿部信子代表は大手企業の参入に肯定的だ。自社のブランドイメージへの考慮などから提供サービスの質が向上し、介護職員の待遇改善や福利厚生面の底上げにもつながるとみる。