丸紅など秋田で洋上風力発電 月内にも新会社、コスト削減や送電網整備課題

 
福島の浮体式洋上風力の実証試験。着床式洋上風力の事業化が進む中で、本格導入には浮体式の実用化も期待されている(福島洋上風力コンソーシアム提供)

 丸紅や大林組など企業連合が、月内にも秋田県の2港湾内で着床式の洋上風力発電運営の特別目的会社(SPC)を設立することが9日、分かった。出力は計14万5000キロワットで、2021年度以降の発電を目指す。事業規模は840億円程度。陸上の適地が限られる中、陸上よりも風力が安定する洋上風力は欧州などで開発が進むが、日本は遅れていた。茨城県の鹿島港沖(神栖市)に加え、新潟県の岩船港沖(村上市)でも、日立造船や三菱商事など10社連合が事業化を検討する。ただ、本格導入には建設コスト削減や地域などの送電網整備の課題がある。

 専用船の英企業買収

 丸紅などが計画する18年度着工予定の能代港湾(能代市)は、出力8万キロワットで21年度の発電開始を、秋田港湾(秋田市)は6万5000キロワットで22年度の発電開始をそれぞれ見込む。SPCには、2社のほかエコ・パワー、秋田銀行など地元企業も出資する予定。

 丸紅などが出資する地域送電網運営会社の秋田送電を通じ、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度で東北電力に売電する。今後は風況調査に加え、地底のボーリング調査などを進め来年度にも投資決定する。丸紅は洋上風力の据え付け工事を行う専用船を保有する英シージャックスを買収し、日本法人を設立。効率的な設置作業やメンテナンスも検討する。

 鹿島港沖は、ウィンド・パワー・グループ(神栖市)とソフトバンクグループのSBエナジー、オリックスの3社が530億円を投じ、出力10万キロワットの洋上風力を17年度以降に発電開始する予定。新潟県の岩船沖でも、日立造船や日立製作所などが参加する18万5000キロワットの建設計画があり、25年の運転開始を模索する。現在、全国で6件のプロジェクトが計画されている。

 洋上風力は海底に風車を固定する着床式の事業化が進んできたが、建設コスト削減や遠隔によるメンテナンス維持管理が課題だ。さらに電気を送る地域送電網整備や需要地へ送電するための連携線をどう費用負担するかの課題もある。

 浅瀬が少ない日本での洋上風力の本格普及には、チェーンなどで固定し風車や発電所を浮かせる「浮体式」の普及も欠かせない。福島沖の浮体式の実証試験では、コスト削減の方法や事業化の是非などを見極める。

 欧州を追い上げ

 日本風力発電協会によると、14年度までの風力発電の設備容量は累計303万キロワットで、30年に洋上を含め3600万キロワットの風力発電を目指している。経済産業省も、30年に風力で1000万キロワット(洋上風力は82万キロワット)を目標に掲げる。

 英国など欧州における洋上風力の導入量は、約800万キロワット(14年末現在)に上る。丸紅は「欧州にキャッチアップしたい」と述べ、国内での普及加速を進めたい考えだ。

 ■計画中の主な着床式洋上風力プロジェクト

 (プロジェクト/事業者/事業計画)

 茨城県の鹿島港/オリックス、SBエナジー、ウィンド・パワー・グループなど/10万キロワット、陸上部分を着工、2017年度以降稼働

 秋田県の秋田港・能代港/丸紅、大林組、エコ・パワーなど/14万5000キロワット、21年度以降順次稼働

 新潟県の岩船沖/日立造船、日立製作所、三菱商事など10社/25年稼働を目指し事業化調査中

 青森県のむつ小川原港(六ケ所村)/むつ小川原港洋上風力開発/8万キロワット、事業化調査中

 北海道の石狩湾新港/グリーンパワーインベストメント/10.4万キロワット、20年春ごろ稼働