「井阪社長の発言にがっかり」「なんで息子の話が出てくるのか」セブン鈴木会長辞任会見 一問一答詳報

 
記者会見で退任を表明する鈴木敏文氏

 セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者の会見での一問一答の詳細は次の通り。

 --具体的に引退を決意したのはいつか。取締役会ではセブン-イレブンの社長人事についてどんなやりとりがあり、会長の受け止めは

 「役員会の席でも(HD取締役として出席している)井阪社長も発言した。そこでも井阪君は、自分1人でやってきたという発言を繰り返したので、すごくがっかりした。普段は叱責しないような役員も『よくそんなことが言えたものだ』というようなことをいった人がいたのが実態だ。そのような状況で井阪氏を信任してやっていくのは将来に禍根を残すと思い、役員会が終わった後、急遽、引くと言うことを伝え、今日記者会見すると伝えた。村田社長らは引き留めてくれたが、私は先ほど申し上げたように、過去最高益を出し続けてきた。そして今年度もまあ最高益を出せるだろうと思った。1つのお荷物といわれているイトーヨーカ堂もなんとか見通しがつく状態になった。そういうわけでは決して私が逃げ出す訳ではないが、十分納得できた。したがって決めたのは今日だ」

 --役員会の採決は

 「取締役は15名で、会社案に反対6、賛成7、白票2だった」

 --米投資ファンドのサード・ポイントからは世襲を批判する意見も出ていた

 「なんで息子の話が出てくるのか、社内でも飛び交っていることを聞き、びっくり仰天だ。一言もいったことはないし、息子に対してそんなことを考えたこともない。ましてやセブンイ-イレブンに直接タッチしたわけでもない。技術屋ですから。ですが、それがまことしやかに社内で言われるということはいかに私の不徳のいたすところだと思う」

 「それに私としては、反対票が社外役員を始め、社内の役員からも出るようだったら、私は信任されていないと深く考えた。反対6票、賛成7票、白票2票というのは何ら問題にしていない」

 --引退という言葉の場合、当面の経営体制は

 「それは皆さんが話す問題。私が指名するというようなことは考えていない。ただ、明日から急に出てこないというような無責任なことは出来ないし、1万8千店のオーナーさんのこともあるし、オーナーさんからもなぜ辞めるんだという電話を頂いている。そういうこともありますので、いつ、今日、明日、明後日、4月一杯というようなことはありません。新体制に立候補するつもりはない」

 --辞任という言葉は人事案の否決が原因か

 「それもある。ということは執行部として私はずっとやってきた。会社に入って自分が示した人事案が否定されたということはありませんし、ましてや資本と経営の分離は私が強く社内でいってきた問題。自分の言葉に責任を持たないといけない。自分自身に言い聞かせているところだ」

 --伊藤家の信任を受けていたのが、はしごをはずされたのか

 「私はくどくなりますが資本と経営の分離をいってきた。今、伊藤家の資本そのものは全体の約10%。ですからそのこと自体は経営に大きく影響するものではないが、私は小売業、なかんずく、今我々がやっているフランチャイズビジネスを考えるとその辺をきちんとしないといけない。その見本を作るのが大きな使命だと思った。何もそれはセブン-イレブンだけの問題では無く、口幅ったい言い方ですが、日本のコンビニエンスストア、総反対された中、これを作ってきたものとして、資本と経営の分離はこれからの小売業において大変重要だという思いからだ」

 --伊藤家の意向か

 「そういうこともありますし、このままいったら、実際に大株主でも無い人に経営に口をはさまれると十分に推測される」

 --伊藤名誉会長の後を継いで、会社を大きくされたはずなのに、なぜ最後にはしごを外されたのか

 「言いにくいことでご勘弁いただきたいが、世代替わりがあった」

 --なぜ、伊藤名誉会長と直接話し合わなかったのか、疑問だ。2人で話し合えば、普通の常識の解決が出来たと思うが

 「これは今までずっと良好な関係だった。ここへ来て急遽変わった。これまでさまざまな提案に拒否されたこともない。しかし、世代が変わった。抽象的な言い方ですが、これで勘弁いただきたい」

 --人事案で伊藤名誉会長から判子をもらえなかったというのは

 「(村田社長)指名・報酬委員会に提出する人事案について、本来名誉会長の承諾をえるものではないが、委員会の中で、そうはいっても創業家で約10%の株を持つ伊藤名誉会長の意見も重要な判断材料になる。それにとらわれるものではないが、そこについても、私どもは、名誉会長と鈴木に絶大な信頼関係があったと思いまして、それならば印鑑を頂きにいこうと伺った。ところが押せないという話しで、私もえっ、と思った。押せない理由は分からない」

 --反対が社内取締役からも出て今回引退につながったが、人事案は指名・報酬委にかけた後、合意を得ないまま、取締役会にかけたので、説明に欠けたのではないか

 「委員会では5時間かけて議論した。決して時間がなかったわけではないと考えている」

 --指名・報酬委で5時間かけて議論したが、社外取締役から疑問視された提案をそのまま役員会にかけている。指名・報酬委員会とは何なのか

 「絞って申し上げると、7年間最高益を続けたのは社長がやめさせるというのは世間の常識が許さない。ただ、この1点です」

 --鈴木会長は結局、いつ退任するのか

 「今日決めたことなので明日は出るはずのアナリスト説明会にも出ない。辞めるのにこの1年をどう引っ張るとはいえないので出ない。ただ、そうなると理由は何なんだとなるから、今日皆さんにやめると申し上げたほうが良いと考え、会見を開かせていただいた。私の不徳のいたすところだ」