日産の自動運転車、一般道をすいすい 試乗で感じたトヨタ車との違いと課題

 
日産自動車の実験車両は停止時に計器パネルが信号などの検知を知らせるカメラ画像に変わる=10月31日、東京都江東区

 トヨタ自動車に続き、日産自動車も報道陣向けの自動運転車試乗会を開いた。トヨタは高速道路だったが日産は一般道だ。歩行者や信号機のある一般道は高速道路より自動運転が難しい。だが後部座席に乗った記者は一般道をすいすいと走るクルマに感嘆。トヨタの自動運転も高速道路で体験したが、甲乙つけ難い技術水準に新たなクルマ社会の到来は近いと確信した。

 人の操作は2回だけ

 試乗会は10月31日、東京都江東区有明周辺の一般道約17キロで行われた。電気自動車「リーフ」を改造した実験車が走り出すと、運転手の操作で「ナビ自動運転に変わりました」と音声案内が流れた。

 クルマは法定速度の50キロ前後で順調に走行するが、運転手はハンドルから手を離してアクセルも使わない。車線変更も円滑で、ここまではトヨタとほぼ変わらない印象だった。

 両社の大きな違いを感じたのが停止時だ。日産の実験車は赤信号を検知して停止すると、計器パネルがフロントガラス上部のカメラ画像に変換。赤信号や歩行者には赤枠がつき、「クルマが気づいていると運転手に知らせることで安心感を持ってほしい」(開発者)。トヨタも車線変更時の音声案内などを充実しているが、日産はヒトとクルマの“意思疎通”をより重視しているようだ。

 左折時も、画像に映る横断中の歩行者を赤枠で表示。数人が通り過ぎてクルマが一瞬動き出しても、後続の歩行者を検知するとすぐに停止した。人間の運転とほぼ変わらない感覚だ。

 約30分の試乗会で運転手のハンドル操作は、合流で渋滞気味の車線に入れなかった際と、警察が交通規制していた道路の2回のみ。路側帯を併走する自転車を検知して減速するなど安全性は高く、日産が計画する2018~20年の実用化も夢ではないと実感した。

 右折に課題

 だが、課題も見つかった。まず右折時は対向車が隠れて見えず、検知が遅れる可能性があることだ。実験車は地図情報を基に目的地に向かい、車載のカメラ12台や小型レーザースキャナー4個などで周囲を検知して衝突を避ける。右折時に隠れた対向車が高速で突進し、検知が遅れれば衝突の危険性は上がる。

 トヨタは対策として、道路や信号に設置したカメラなどの情報をクルマに無線通信で伝える高度道路交通システム(ITS)を開発している。日産がどう対応するかが開発競争の行方を左右する可能性がある。

 また、日産は最長150メートルまで撮影するカメラを多く載せているため、手前が青信号でも次の赤信号を検知して一瞬ブレーキがかかるなどソフトウエアの「判断力」向上が必要だと感じた。浅見孝雄専務執行役員は「カメラなど設備はそろってきたが、状況によって操作を判断するソフトの向上が課題だ」と語る。

 日産は16年に高速道路の同一車線で自動運転の実用化に第一歩を踏み出す。トヨタも20年ごろに高速道路で自動運転を実用化する予定で、各社がしのぎを削りより信頼できる安全なクルマが開発されることを期待したい。(会田聡)