フォルクスワーゲン車改修で燃費悪化の恐れ 排ガス不正、消費者の不信増幅も

 

 不正な排ガス規制逃れ問題を受けて、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、違法なソフトウエアを搭載したディーゼル車の改修に乗り出す見通しだ。適正に規制をクリアできるようソフトの書き換えを行うことなどが想定される。ただ燃費の悪化などにつながる恐れもあり、対応を誤れば消費者の不信が増幅しかねない。

 問題の車両は、エンジンなどを制御するコンピューターに搭載されたソフトがハンドル操作などから「試験中」と判断すると排ガス浄化機能が作動し規制基準をクリア。

 一方、実際の走行のように「試験外」と判断すれば浄化機能は作動せず、排ガス中の有害物質は増加。代わりに燃費は向上するとされる。

 これまでVWは問題のソフトを搭載したディーゼル車が世界で約1100万台に上ると発表。対策費用として、約65億ユーロ(約8736億円)を計上することを決めている。

 具体的な改修方法は明らかにしていないが、VWは「試験と実際の走行の(排ガスの)乖離(かいり)をなくすための技術的な解決に全力で取り組む」と表明。想定されるのは、排ガス中の有害物質を減らして規制をクリアするため、浄化機能を向上させたりエンジンの燃料噴射を調整したりするなどの方法だ。

 ただ浄化機能を向上させれば燃費の悪化や浄化装置の早期劣化につながる恐れがある。またディーゼルエンジンは、燃料の噴射を濃くすれば排ガス中の有害な窒素酸化物(NOx)を減らせるが、結果的に燃費は悪化するデメリットがある。

 VWがこうした問題点を解決できているかは不明だ。作業自体はソフトの書き換えなどで済むとしても、改修の結果、燃費悪化などにつながれば所有者の反発を招く恐れもあり、難しい対応を迫られる。

 一方、国土交通省が無作為抽出した個人所有車を調べる「抜き取り検査」の強化を検討していることが28日、分かった。

 検査対象は毎年、ガソリン車で販売数が多い3車種程度にとどまっていたが、今回不正が発覚したディーゼル車も含め対象を増やす方針だ。

 抜き取り検査は交通安全環境研究所などが実施するが、実施台数は毎年十数台に限られ、事実上ディーゼル車は検査対象になっていなかった。

 同省は週内に、ディーゼル車を販売する国内外7社から同様の不正がないか聞き取り調査する。その結果なども踏まえ、検査強化を具体的に検討する。