関西の鉄道ICカードが「1円刻み」にできないワケ

 
関西と首都圏のカード型IC乗車券。消費税8%化で対応が分かれたが…

 来年4月に消費税率が8%に引き上げることが決定したことを受け、JR西日本と関西私鉄5社がカード型IC乗車券の運賃を「10円刻み」で値上げする方向で準備に入った。

 「1円刻み」の場合、自動券売機で切符などを買う料金と差が生じ、利用者の反発を招く恐れがあると判断した。関西に比べICカードの普及率が高いJR東日本と首都圏の私鉄は「1円刻み」の値上げを検討しており、東西で対応が分かれる格好になる。

 今月16日の記者会見で、JR西日本の真鍋精志社長は、消費税増税に伴う運賃の値上げについて、「10円単位での対応でやりたい」との考えを改めて示した。近畿日本鉄道や阪急電鉄などの私鉄5社も10円刻みでの対応とする方針だ。

 10円刻みで値上げした場合、増税分を料金に反映した上で、1円単位を四捨五入するか、切り上げるとみられる。例えば、200円の区間で単純計算すると、10円刻みでは四捨五入のケースで210円、1円刻みだと206円になる。

 関西で発行されるICカードは、JR西の「ICOCA(イコカ)」と私鉄などの「PiTaPa(ピタパ)」。発行枚数はそれぞれ、約853万枚と約245万枚で、利用客への普及率は定期外だと3~4割にとどまる。

 関西にはICカードが使えない郊外駅があり、回数券などの人気が根強い。自動券売機で買えるプリペイドカードの愛好者が多い上、ピタパは利用料金が後で金融機関の口座から引き落とされる方式で、「与信審査のためにカード発行に時間や手間がかかることも普及率低迷の一因」(関西私鉄幹部)とされている。

 1円刻みで運賃改定できれば、増税分をより細かく反映できるメリットがある。

 ただ、導入する場合は改札機などのシステムの改修が必要。ICカードの普及率が低いと券売機での運賃と異なる「二重価格」となる可能性が大きく、JR西や関西私鉄は1円刻みの運賃改定に踏み切ることには消極的だ。

 これに対し、首都圏ではJR東日本の「Suica(スイカ)」は約4442万枚、私鉄各社の「PASMO(パスモ)」は約2364万枚も出回っている。普及率は約8割と高く、利用者の理解が得られると考えていることが1円刻みの導入の背景にあるようだ。