景気の下振れリスクなどを理由に日銀の追加の金融緩和の期待が高まるなかで、金融機関からは緩和を牽制(けんせい)する声が出始めた。全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀行頭取)は14日の定例会見で「マイナス金利政策の効果が表れていない以上、効果の検証が先決」と注文をつけた。
2月のマイナス金利政策の導入で、貸出金利が低下したにも関わらず、金融機関の貸出水準は上向いていない。国部会長は「企業が借り入れをしない意図を理解し、配慮して進めてほしい」とも述べた。
英国の欧州連合(EU)離脱決定後の為替市場における円高進行や、物価の低迷などを考慮し、市場では「追加緩和に踏み切らざるを得ない」(証券アナリスト)との見方が根強い。
しかし銀行業界にとっては、預金を元手に資金を貸し出すという本業の利益がさらに圧迫され、本来果たすべき金融仲介機能が低下しかねない。このため追加緩和には否定的だ。
また市場では、日銀が永久国債を買い入れ、政府が財政支出を行う「ヘリコプター・マネー」への思惑も強まっている。国部会長は「財政規律が失われるリスクがある。必ずしも好ましくない」と指摘した。