【モスクワ=黒川信雄】露政府系の開発対外経済銀行(VEB)の経営が急速に悪化し、政府に巨額支援を要請する事態に発展している。VEBは2014年に行われたソチ冬季五輪向けの巨額建設プロジェクトへの融資で中核的な役割を果たしたが、政権主導の無謀な計画が損失を膨らませた格好だ。政府は今週中にも支援策をまとめる方針だが、支援要請額は2兆円規模とも報じられ、逼(ひつ)迫(ぱく)する経済にさらなる打撃となる可能性が高い。
支援は数年かけて行われる見通しだが、インタファクス通信によると総額は1.3兆ルーブル(約2.2兆円)にのぼる可能性がある。
VEBは14年に2500億ルーブルの赤字を計上し、15年上半期も700億ルーブル超の赤字に陥っている。さらにVEBは欧米の経済制裁の対象にも含まれ、海外からの資金調達も困難になっている。欧州系格付け大手フィッチ・レーティングスの調査によると、VEBはソチ五輪向けのホテルや競技場建設に合計2210億ルーブルを融資したが、14年末にはその8割が回収が困難とみなされた。
メドベージェフ首相は22日、「VEBの問題は国の経済状況と制裁が関連している。政府として放置はできない」と語り、危機感をあらわにした。
プーチン政権が国の威信をかけ開催したソチ五輪だが、当初予算の4倍超の約5兆円が投じられたとされるなど、投資の計画性が強く疑問視されていた。VEBは「事実上の第2の予算」(露中央銀行元幹部のアレクサーシェンコ氏)として、融資を通じ露政府の支出を肩代わりさせられたと指摘されている。