2015.1.12 21:45
政府の平成27年度経済見通しは、8年ぶりに名目国内総生産(GDP)が500兆円台を回復するなどデフレ脱却に向けた姿を示した。ただ、昨年度の見通しでも、「堅調な内需に支えられ景気回復が見込まれる」(内閣府)とプラス成長を予測していながら、今回の見通しで5年ぶりのマイナス成長に下方修正するなど、政府予測の甘さも浮かび上がる。
「大事なことは実質賃金がプラスとなって、好循環がしっかり回っていくことだ」。甘利明経済再生担当相は12日、記者団に対しこう強調した。
円安に伴う輸入物価上昇や消費税増税の影響で実質賃金は下落し、GDPの約6割を占める個人消費の回復が遅れている。政府は今春闘の大幅な賃上げによって、物価上昇を上回る賃金上昇を達成したい考えだ。
27年度は10月に予定されていた消費税再増税の延期や足元の原油安の恩恵に加え、26年度補正予算案に盛り込まれた経済対策によって、GDPを0・3%程度押し上げる効果が見込まれる。ただ、昨年4月の消費税増税に備えた総額5兆5千億円の経済対策は十分な効果をあげたとは言い難い。今回の総額3兆1千億円の経済対策が想定通りの効果をあげる保証はないのが実情だ。
政府には、原油安の恩恵や経済対策に頼るだけではなく、成長戦略の実行による生産性向上や競争力強化などを早期に実現することが求められる。(永田岳彦)