安倍晋三首相が年内の衆院解散・総選挙と消費税率引き上げの延期の意向を固めたことで霞が関や民間企業に波紋が広がっている。「政策が停滞する」「年末商戦に響く」などと、解散が経済に与える悪影響を懸念する声は少なくない。
第3の矢も先送り?
アベノミクスの「第3の矢」といわれる規制改革は官邸主導が色濃い施策だけに、解散が微妙な影を落としそうだ。
衆院で審議中の国家戦略特区法改正案は、外国人の起業要件の緩和など全国6カ所の特区での追加規制緩和を盛り込んだが、解散で法案が成立しなければ、実現時期が先送りされる。
また、特区の事業計画を認定する国家戦略特区諮問会議の議長は安倍首相自身で「選挙期間中に会議を開くのは難しい」(民間議員)という。経済財政諮問会議や産業競争力会議も首相が議長を務めており、議論の停滞は必至だ。
カジノを解禁する統合型リゾート施設(IR)の整備推進法案は審議入りすらしておらず、衆院解散に伴い廃案となりそうだ。「来年1月の通常国会に法案を再提出する」(推進派の議員)ことになるが、推進派が目指す2020年の東京五輪前のカジノ開業は厳しい。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など通商交渉については、「相手国は強固な政権基盤を築くことを歓迎するはずで、交渉にプラス」(政府筋)と前向きな見方もある。