クルーグマンは、トラブルの深刻さを「万里の長城への激突」と表現し、中国を世界第2の経済大国に押し上げた「中国モデル」が打ち砕かれる危険を明示した。
「中国モデル」の定義はこれまた見解が分かれるところだが、少し前に注目された「北京コンセンサス」のコアというべき中国指導部による「絶えざる刷新」や「公平な富の分配」は、現実から離れ過ぎていたのではないか。いま中国経済の先行きに不安をもたらしている根幹的な理由は、改革が遅れ、ご都合主義的に進められ、結果として富や資源の偏在を許してしまったからにほかならない。
クルーグマンは「数日前までわれわれは中国人をおそれていたが、いまは彼らを心配している。そして、われわれの状況もまたよくなってはいないのだ」との言葉でコラムを結んでいる。氷山が航路上にあるとして、中国の舵はどちらに取られようとしているのだろうか。(産経新聞中国総局長 山本秀也)