賃金の上昇については「それ自体は結構な話だ。賃金の上昇は、普通の中国人がやっと経済発展の果実を手にするのだから」と述べつつも、財政出動に支えられた投資に替わって、個人消費が中国経済の新たな牽引(けんいん)役となる可能性には否定的だ。トラブルとはすなわちここだ。
専門家の間では、中国が「ルイスの転換点」に達したのか否かをめぐって、この数年間すでに論争が続いていた。ルイスの学説に従って、伝統的農業部門と近代的な非農業部門の賃金を計量的に比較する検証作業は、経済学者に委ねるとしよう。
だが、仮に「転換点」に達していないとしても、「民工荒(ミンコンホアン)」と呼ばれる安い出稼ぎ労働者の募集難は、すでに中国の都市部で現実となっている。「転換点」を過ぎた新興国が、大胆な構造改革を図らない限り、高度成長から一転して経済停滞に陥る危険をはらむことは、多くの国ですでに実証されている。