2013.7.14 07:00
韓国ソウル市内にある韓国資本の日本食レストラン。高い人気を誇る日本のビールの看板を掲げている(ジェトロソウル事務所提供)【拡大】
関税が原則撤廃される環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は果たして“追い風”なのか、それとも“向かい風”なのか。答えは簡単に出せないが、そのヒントが韓国と米国の間ですでに発効している米韓FTA(自由貿易協定)の中に隠されていた。大事なのは、高くて確かな技術を持つことと自由貿易圏という「風」を見極める力。日本が今後どう闘うかを考えたい。(大谷卓)
前年比55%も増えた米国産日本酒
昨年、韓国の自動車市場で異変が起きた。トヨタ自動車の米国産セダン「カムリ」が「韓国カー・オブ・ザ・イヤー」を輸入車メーカーとして初めて獲得したのだ。現代自動車などが圧倒的なシェアを誇る中での快挙だった。
理由はある。昨年1月に発効した米韓FTAを見越したトヨタの「戦略」だ。これによって米国からの輸入関税は8%から4%程度に引き下げられ、5年目にはゼロになる。日本からの乗用車輸入関税は8%のままだから、米国産を輸出するほうが有利だ。販売実績は年間1万6千台だが、技術力に勝るトヨタ車が、韓国の消費者にも受け入れられたのだが、米韓FTAを“追い風”にしたというわけだ。