ただ、14%台と高止まりしている失業率を改善し経済を発展させるための政策は、外資企業の誘致を増やすことに限られる。そのため経済協力開発機構(OECD)34カ国の中で最も低い法人税率を採用している。
実際、低い法人税率は進出を後押ししており、米電子機器大手アップルなどのIT企業や製薬会社などを中心に外資企業の進出は増加している。問題は、アイルランドに拠点を設置する企業が、実際の税金の申請を法人税率ゼロの租税回避地で行うなど「二重の節税対策」の舞台に使っていることだ。
米議会が5月、アップルが欧州やアジアで得た利益を、アイルランドの子会社に移し、2%未満の税金しか納めなかったと指摘したのも、アイルランドが、米企業の節税対策に巧みに利用されているとの懸念を踏まえたためだ。
この問題が主要8カ国(G8)首脳会議(ロックアーン・サミット)の主要議題となるなか、アイルランドは、企業をつなぎとめる税制と、課税逃れ対策のはざまで揺れている。(今井裕治)