そして18日、政府はやむを得ず一部地域の電気料金の引き上げを認める方針を固めた、との新聞報道があった。もしそれが事実ならば、要するに中国の強大な独裁政府は、市場経済からの集団的反乱の前で敗退を余儀なくされた、ということになるのである。中国の現体制の下では、それはまた、「天変地異」を予感させるほどの画期的な出来事ではないか。
今まで、中国の奇形的な「社会主義市場経済」は根本的な矛盾を内包しながらも何とかこの国の「繁栄」を支えてきたが、ここまでくると、それはいよいよボロを出して綻(ほころ)び始めている。何しろ、「社会主義=独裁的政治体制」に対する「市場経済」の反乱がすでに始まっているからである。今後、政府当局と市場との攻防がさまざまな場面で展開していくとも予想できるが、その「全面対決」の時はいつやってくるのか、まさにこれからの「見どころ」である。
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【プロフィル】石平 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。